婦人科の病気.

卵巣腫瘍−良性

卵巣腫瘍とは

卵巣腫瘍は自分で何か症状を感じることが(自覚的症状といいます)少ない病気です。このため大きくなって初めて診断がつくことがよくあります。 また卵巣腫瘍には良性のものと悪性のものがありますが、始め良性腫瘍だったものが悪性化することがあり、良性と言われても定期的な検査をすすめられる時があります。 *良性と悪性の中間とも言うべき腫瘍もあります。これを境界型悪性腫瘍といいます。境界型悪性腫瘍のページをごらん下さい。

卵巣がどれだけ大きくなっていたら異常でしょうか。

正常の卵巣はややだ円形をしていて、直径が2‐3cmです。

卵巣の大きさは超音波検査でみることが殆どですが、超音波検査で直径が3cm〜3.5cm(医師や病院によって基準に差があります−この事については医師から説明があるでしょう)以上になった場合は卵巣がはれている(卵巣腫瘍…一般的には卵巣のう腫)と判断される事があるようです。 はれた卵巣の中には水が貯まったり、血液がたまったりしますが内容により経過の観察の時期や治療法がかわる事があります。

卵巣腫瘍はどのようにして発見されるのでしょうか。

  1. 自分で分かる症状
    • 小さい腫瘍の時は分からない時が多いのですが、それでも少しお腹が痛くなったり、はったりしておかしいと思う時があります。また腰痛で気付く時もあります。
      月経痛や排卵痛で気付く時もあります。
    • 大きくなるとお腹が出てきたり、手で触れる事が出来る時もあります。
      腹部の膨満感や食事後の満腹感など胃腸症状が出る方もおられます。
    • ホルモン異常をきたし不正出血がある時もあります。
    • 大きくなった腫瘍がねじれて突然強い腹痛におそわれて分かる時があります。

  2. 他の検診で偶然分かることがあります。
    • 子宮癌検診をうけた際一緒に卵巣のチェックをうける事が多くなり、この時指摘される事があります。
    • 会社の検診等で超音波、CT、MRIの検査で診断される時があります。
    • 胃腸科の検診の際、超音波の検査で発見されることがあります。

卵巣腫瘍が疑われたら、どんな検診がすすめられるのでしょうか。

  1. 内診 婦人科独特の検診ですが、若い方や内診を希望されない方は他の方法で代用する事も可能です。
  2. 超音波検査 お腹の上から検査する方法と膣の方から検査する方法があります。膣の方(経膣法といいます)から検査する方がより詳しく観察する事が可能と言えるでしょう。
    膣の方からの器械が入らない方、希望されない方はお腹の上からの検査で観察します。

  3. 血液検査
    1. 腫瘍マーカー検査
      • 卵巣腫瘍が悪性の疑いがないか、急に大きくなる可能性はないか、活動力のあるタイプではないか等が分かります。
      • 卵巣腫瘍のタイプが分かる事があります。
      • 卵巣チョコレートのう腫などでは治療後の再発のサインになる事があります。
      • CA125、CA19‐9、CA72‐4、CEA、α‐フェトプロティン、TPA、SLX、フェリチン、など いろいろあります。
    2. 貧血検査 血沈検査 CRP検査
      肝機能検査などいろいろな血液検査がすすめられる事があります。

  4. MRI検査、CT検査
    これらの検査ではより詳しく卵巣腫瘍の状態が分かります。
    なおX‐線被爆の面から若い女性はCT検査よりMRI検査が望ましいと考えられます。
  5. その他 PET検査、シンチグラム検査など
    必要に応じて検査をすすめられる事がありますが医師から説明があるのが普通です。

卵巣腫瘍の診断がついたら次にどういう経過をとる事が多いでしょうか。

卵巣腫瘍と診断がつくと、さらに精密検査をうけて何らかの治療をうけるようにすすめられる時と、そのまま定期的な検診をすすめられる時があるます。どのような経過をたどる事が多いか考えてみましょう。

概ね上のような経過で進む事が多いようです。

経過を観察する時、注意されなければいけない時があります。

1. 大きさが問題になります。
ある一定の大きさ以上なら定期検査は必要。
6cmをこえたら精密検査をすすめられる事が多いようです。6cm以下でも内容によっては精密検査をすすめられることがあります。

2.定期的に観察していて大きくなるものは注意が必要です。

3. 腫瘍の「かわ(被膜といいます)」の部分が分厚くとび出した型は小さくとも要注意です。

腫瘍の「かわ」の部分が白く見えますが、分厚く内側に突出している型には注意
(ただし良性腫瘍でもあります。)

4.腫瘍が自分の大きさでねじれる時があります

捻転といってすぐ手術が必要になる時があります。
急激に腫瘍が大きくなり、痛みも強くなります。

5.まれな事ですが腫瘍が破れる時もあります


超音波検査でお腹の中に腫瘍の中味や出血、腹水が貯まっているのが分かる時があります。緊急の手術が必要になることがあります。この時は強い痛みがあるのが普通です。 

良性の卵巣腫瘍と診断をうけると、その後どういう治療方針をうけるのが普通でしょうか。

  1. すぐに手術などの治療をうけず経過観察をすすめられる時があります。
    卵巣に腫瘍が出来ても、月経後小さくなり正常の大きさになることがあります。
    排卵後の卵巣出血、黄体のう胞など
  2. 手術がすすめられる場合があります。
    • だんだん大きくなる腫瘍
    • 卵巣腫瘍の被膜(かわ)の部分が一部分厚くなったり、突出部が出てきた時
    • 閉経後に卵巣腫瘍が大きくなった場合。
      卵巣腫瘍の内容によっては悪性化する可能性があるものがあります。
    • 痛みが強くなる時
      • 下腹部とともに上腹部が痛くなる時
        卵巣腫瘍が破裂して痛みが出る時があります。
      • 下腹部が急に痛くなる時
        卵巣腫瘍がねじれて痛くなる時があります。
    • MRI、CT検査などの後で、手術をすすめられる時があります。
    • 子宮癌検診(特に子宮体部の検診)の後、卵巣の異常が疑われ手術をすすめられる時があります。

卵巣腫瘍の手術

卵巣腫瘍の手術にはいろいろな方法があります。


1. 開腹手術  お腹を切る手術です。
ⅰ)卵巣腫瘍が大きい時
ⅱ) 周囲との癒着があると考えられる時
ⅲ) 以前、1〜数回お腹を切ったことがある時
ⅳ) 少しでも悪性の可能性がある時など。
お腹は縦に切る方法と横に切る方法があります。
横に切る時は、下着の下に隠れるように切開する時もあります。

卵巣の手術にはいくつかの方法があります。

a.仮に片方の卵巣が残っていれば将来ホルモン的には全く問題がありません。
b. 少しでも卵巣の一部が残れば、残った卵巣からはホルモンが出てくれます。
c.しかし、卵巣腫瘍の種類によっては残した正常と思われた卵巣から、また新しい腫瘍が出来る事があります。

⇒どの方法をとるかは、医師とよく相談しましょう。

4.腹腔鏡下手術
お腹に数ヶ所小さな穴をあけて手術を行う方法です。
かなりの大きさの腫瘍もとれます。多少の癒着があっても手術は可能です。

5. 膣式手術

お腹に傷が残りません。しかし卵巣腫瘍の大きさ、癒着の程度、少しでも悪性の可能性がないかなどにより、手術が可能な方は限られています。

6.特殊な手術
卵巣の内容を吸引する手術
主に卵巣に出来た子宮内膜症(チョコレートのう腫)の時に行われます。
(子宮内膜症のページをごらん下さい。)
他の腫瘍で行われる時もあります。

手術が終わった後はどうなるでしょうか。

  1. 手術で切除した腫瘍の顕微鏡検査が大切です。
    これを病理組織学的検査といいます。
    手術前に良性と判断されていても、顕微鏡の検査で要注意がでる事があります。

    結果は次のようにでます

  • 良性
  • 境界型悪性(良性と悪性の間のようなもの)
  • 悪性

赤ちゃんが欲しい方で境界型悪性腫瘍あるいは、悪性腫瘍と言われた方は後の対応がとても微妙です。(境界型悪性腫瘍のページをごらん下さい。)また、腫瘍の内容・広がり方・年令などから同じ腫瘍でも方針が異なることがあります。医師とよく相談しましょう。

  1. 手術後の定期的な検診は必要でしょうか。
    • 境界型悪性と言われた方は医師のアドバイスに従う事が必要です。
    • 良性腫瘍の時は普通術後の検診期間が終了したら通院の必要はありません。ただし腫瘍の内容(例えばチョコレートのう腫など)によっては、残っている正常の卵巣に新たに腫瘍が出来る事があり、通院をすすめられる事があります。
    • 手術後の腹痛など気になる事があれば婦人科を受診しましょう。
    • 今回の手術で全く問題がないと言われた方でも将来卵巣に何も異常が起らないという保証はありません。手術後医師から今後の通院など詳しくお話があるでしょう。

  2. 手術後のホルモン環境について
    • 両方の卵巣を切除するとホルモン不足の症状が出る可能性があります。手術時の年令も関係します。
    • 片方の卵巣の切除だけでしたらホルモン環境に変化はありません。
      一般的には1つの卵巣の1/10あれば女性ホルモンは十分働き、1つの卵巣の半分残っていれば妊娠が可能と考えられています。
    • しかし理論的にはホルモン環境に変化がないと考えられている方でも更年期障害様の症状が出る時があります。
      • 卵巣を切除したという精神的な負担が原因の時があります。
      • ホルモン剤、安定剤、自律神経薬、漢方薬を用いる事があります。

  3. お腹の傷が気になる時があります。
    人によりお腹の傷の治り方には差がありどうしても気になる方がおられます。こうした時は次のような治療がすすめられます。
    1. テープを貼る(手術早期が望ましい)
    2. 塗り薬を用いる  副腎皮質ホルモン剤
    3. 内服薬  トラニラスト剤(商品名 リザベン)
    4. 形成外科的な治療をうける
      (美容外科ではなく形成外科的治療です。)

  4. お腹や腰が痛くなる時

卵巣腫瘍(良性)にはどのような種類があるのでしょうか。

良性腫瘍

  1. しょう漿えきせい液性卵巣腫瘍
    卵巣の中にお水が貯まる腫瘍です。
    卵巣腫瘍の中では最も多いタイプの1つで良性腫瘍約25%といわれております。

    超音波検査では卵巣の中にお水が貯まり黒く見えます。

    良性腫瘍ですが、閉経後も小さくならない時は注意しましょう。
    閉経後観察をつづけて小さくならないタイプに将来悪性化するタイプがあると考えられています。

  2. 粘液性卵巣腫瘍
    卵巣の中に「ぬる」とした粘液が貯まるタイプの腫瘍です。良性腫瘍の約20%と考えられています。

    超音波検査では卵巣の中が黒く見えますが、いくつかの部屋に分かれて見えることがあります。
    まれですが少しずつ大きくなるタイプに悪性腫瘍が紛れ込んでいる時があります。

  3. 類内膜腫瘍(チョコレートのう腫)
    卵巣の中に古い血液がたまる腫瘍です。子宮内膜症の卵巣に出来たタイプです。手術後、中を割ってみるとチョコレートシロップをとかした様な状態にみえるのでチョコレートのう腫とも言います。

    超音波検査では内容がすりガラスの様にやや白くうつります。

    将来悪性化する可能性もなくはありませんので定期的な検診をうけましょう。
    子宮内膜症のページをごらん下さい)

  4. 良性奇形腫(皮様のう腫、デルモイド腫瘍ともいいます)
    卵巣の中に人間の組織の一部、汗のもとになる組織(汗腺といいます。)汗腺から出た分泌物→油のようになります。
    髪の毛、歯、骨、軟骨、皮膚の一部などが出来るものです。良性腫瘍の中では最も多いものです。まれですが、これらの組織の一部が悪性化することがあります。

    超音波でみると卵巣の中が真っ白に見えます。

  5. 線維腫
    さわると硬い腫瘍です。医師が触診して硬く感じる時は悪性腫瘍と考えなければいけません(自分では卵巣腫瘍の硬さが分からないのが普通です。)がこのタイプだけは良性腫瘍です。
    全卵巣腫瘍の約3%といわれています。

    超音波検査で隣にある子宮と同じように映り、子宮筋腫と区別がつかない時もあります。
    まれな事ですが悪性の時があります。

  6. ブレンナー腫瘍
    これも触診すると硬く感じられる腫瘍です。卵巣腫瘍の約1%と言われております。
  7. 莢膜細胞腫
    莢膜細胞という女性ホルモン(卵胞ホルモン)を出す組織に似た細胞からできる腫瘍です。女性ホルモンを出すことがあり、閉経後の出血や、乳房が大きくなっ てくることがあります。血液のホルモンを測定すると高くなっていることがあり、この事からホルモンを出す腫瘍が疑われることがあります。
  8. その他甲状腺に似た組織をもった腫瘍や、腎臓の組織に似た腫瘍など稀ですがいろいろな腫瘍があります。手術後検査の結果が出たら医師と相談しましょう。
    卵巣腫瘍は人間の身体の中で最もいろいろなタイプの腫瘍が出来る臓器として知られています。
    手術前にどんなタイプか分かる場合が多いのですが、正確には切除された腫瘍を顕微鏡で詳しく検査する事が必要です。
    手術後にその事について医師からお話があるでしょう。

卵巣腫瘍は悪性化することがあるでしょうか。

良性の卵巣腫瘍が悪性化することがあると考えられています。
どういう症状に気をつけていれば良いでしょうか。


  1. 自分でお腹が急にはれてきたと感じる時、「おでき」があると感じた時は診察をうけましょう。痛くなった時も同様です。
  2. 卵巣に血液がたまるチョコレートのう腫は将来悪性化する可能性があると考えられています。定期的な検診を受けましょう。
  3. 更年期をすぎても卵巣腫瘍が縮小しない時は注意しましょう。
  4. 卵巣腫瘍の被膜「かわ」の状態の変化に注意しましょう(《卵巣腫瘍 良性》経過を観察する時、注意されなければいけない時があります のページをごらん下さい)
  5. 長期間大きさが変化しない時、あるいは腫瘍が増大する時は注意しましょう。

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