婦人科の病気.

更年期障害

更年期障害とは

日本人の閉経の年令は平均すると50才台です。(51才直前といわれています)。 この前後数年間に表れる精神的、肉体的な異常を更年期障害といいます。 更年期障害には身体に何らかの変調があらわれてくる場合と(肉体的な症状といいます)気持ちの上で変化が出てくる場合(精神的症状といいます)があります。
代表的な症状は


【肉体的な症状】 ・顔あるいは上半身ののぼせ感、熱感。 ・ほてり感、カーと熱くなる、顔が赤くなる、発汗。 ・時に冷感を伴うことがある。 ・寝汗がひどく夜中にパジャマを着替える。 ・冷え症状(特に手・足)。 ・頭痛、頭重感、肩こり、不眠、夜中に目がさめる。 ・熟睡ができない。 ・皮膚がカサカサする ・排尿に関するトラブル ・頻尿、特に夜間の頻尿、動悸、息切れ
【精神的な症状】
・イライラする ・家族にあたる、自分で分かっているけれど押さえきれない。 ・うつ的な気分になる ・根気がなくなる ・気力がない気がする ・家事や仕事がおっくうになる ・もの忘れをすることが多くなった。

更年期障害の時はどんなホルモン状態になっているのでしょうか。

更年期障害とは女性ホルモンの働きが悪くなるために起こる症状と考えられています。 脳に脳下垂体という所があり卵巣の働きを監視しています。


脳下垂体では卵巣を監視していて、卵巣の働きが悪くなるとFSHホルモン、LHホルモンが多く出て、卵巣ホルモンが出るように刺激を出します。 更年期になると卵巣の働きが悪くなるためFSH、LHの値が高くなります。 卵巣からは卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が出ます。 更年期になるとこれらのホルモンが減ってくるため、このホルモンを測る事で卵巣の働きの程度が分かります。

更年期障害の強い時は卵巣からのホルモンが減り、脳下垂体からのホルモンが増えているのが普通です。これらのホルモンが正常なのに更年期障害と思われる症状が出ている方がおられます。30代〜40代前半で、これらの症状が出ている方で自律神経失調症やうつ状態の方がおられます。こうした方々にはホルモン剤よりもそれぞれ専用のお薬が有効です。

本当に更年期障害でしょうか —— 更年期障害と似た症状 ——

更年期に症状が出てくるといって全て更年期障害とは限りません。 更年期障害に似た別の病気の時があります。 1. 自律神経失調症 2. 心身症 3.うつ状態 4. 神経症 5. 内科的な病気(脳血管の病気など) 6. その他

自律神経失調症、心身症、うつ状態は後から説明があります。 神経症、内科的な病気については、それぞれ専門書を御参考ください。

(1)更年期障害の程度を自分で判断する方法~

更年期障害の有無、症状の強さをみるのには小山嵩夫先生の簡略更年期指数(SMI)があります。 症状の程度に応じて○印をつけ、その合計点をもとにチェックをします。

《自己採点の評価方法》

0点〜25点異常なし
26点〜50点食事や運動に注意しましょう。
51点〜65点 更年期外来、閉経外来を受診し生活指導をうけたり、お薬を処方してもらった方が良いでしょう。
66点〜80点長期間の計画的な治療が必要です。
81点以上各科の精密検査、長期間の計画的な対応がすすめられます。(生活指導やお薬など)

この診断法で薬物療法の必要なしと出ても、成人病などの予防を目的とした薬物療法などの必要性まで否定しているものではありません。(小山嵩夫:日本医師会雑誌 109 259 1993)

(2)更年期障害の治療

1.女性ホルモンを中心としたお薬による方法

使用されるホルモン剤はいろいろあります。

  1. どんなホルモン剤が使われるのでしょうか。

    卵胞ホルモン剤が用いられます。

    1. 内服するお薬
      • 結合型エストロゲン剤(商品名 プレマリン)
      • エストリオール錠 (商品名 エストリール)
    2. 貼り薬
      • エストラジオール(商品名 エストラーナ)(2日に1回)
      • 〃    (商品名 エストダーム)(2日に1回)
      • 〃    (商品名 エストラダームM)(2日に1回)
      • 〃    (商品名 フェミエスト)(1週間に2回)" など皮膚に貼布するお薬もあります。
  2. 黄体ホルモン剤という女性ホルモンを一緒に用いるようすすめられる場合があります。

    黄体ホルモンを一緒に使うと、卵巣ホルモン剤のみを用いた時に出てくる可能性がある副作用を予防する効果があると考えられています。たとえば子宮体がんなど。

  3. お薬ののみ方

    "更年期障害"

    1. 卵胞ホルモンのみ (子宮筋腫の手術などで子宮がなくなった方など)
    2. 卵胞ホルモン 黄体ホルモン
    3. 卵胞ホルモン 黄体ホルモン
    4. 卵胞ホルモン1日おき、または週2回 黄体ホルモン
    5. その他いろいろあります。
    6. 卵胞ホルモンと黄体ホルモンを一緒に用いるか、用いるとするとどの組み合わせが良いかは医師とよく相談しましょう。
  4. ホルモン剤を用いた際のメリット
    1. 本来の更年期障害の治療になります。
    2. 骨粗しょう症の予防やお肌のみずみずしさを保つなどの二次的なメリットもあると考えられています。
  5. ホルモン剤を用いた時の副作用が考えられる時もあります。 気をつけなければいけない注意の一つに乳がんの発生に関する事があります。 女性で患る癌の第1位は乳癌と大腸癌が競っています。1年に1度の乳癌検診をうけていれば良いという考えもあります。
    • 但しお薬を使用するメリットの高い時はお薬を使われる方が良いでしょう。
    • お薬の使用方法、使用期間、気をつけなければいけない副作用のチェックをうけながら、お薬を使用する事が大切です。
    • 医師と詳しくディスカッションをしながらお薬を用いましょう。

2.漢方薬やビタミン剤が効果を表す事があります。

漢方薬には卵巣の機能を高める作用があるものがあり、ホルモン剤の代わりやホルモン^剤と一緒に使われる時があります。

温経湯、当帰芍薬散、加味逍遙散など

ビタミン剤のうちビタミンCは卵巣の働きを低下させるアポトーシスという作用を抑え、卵巣の機能を維持させると考えられています。
またビタミンEも卵巣の働きに効果があると考えられます。
(なおビタミンEの使用については、妊娠中は気をつけるようにしましょう。)

ビ タミンEはビタミンCと違い、必要以上の分は尿で排泄されず身体(特に肝臓)に貯まってしまうと考えられています。過剰なビタミンEはお腹の中の赤ちゃん には良くないという考えがあります。このため妊娠中はビタミンEは普通の食事の中でとるようにしましょう。ビタミンEの入ったサプリメントは妊娠中はおす すめ出来ません。
また鶏やブタ、牛のレバー(肝臓)はビタミンEが過剰の時があります。妊娠中の方は食べ過ぎないように注意しましょう

3.食事にも気をつけましょう。

  • 規則的な食生活はとても大切です。
  • 朝起床してから食事までの時間は少し余裕がある方が望ましいと考えられています。
    どうしても夜遅くまで仕事のある方はむずかしいのですが、就寝時間を早目にして、睡眠時間を十分とり、起床を早くにというのが理想です。
  • 無理なダイエットや過度な運動はかえって、ホルモンの働きの妨げになる事があります。
  • 食事内容もバランス良いものを考えましょう。
  • 女性ホルモンの働きに良いと考えられる食べ物があります。
    例えば、イソフラボンなど。(豆腐、納豆などの大豆製品)

4.スポーツや趣味

スポーツや趣味はとても有効な対策になり得ます。
自分で行うスポーツの他、試合をみるのもスポーツに参加した事になります。
今のところ何も趣味がないという方でも、近所の散歩、美術館をまわる、古書店に入るというのも立派な趣味です。まず身体を動かしてみましょう。

スポーツをするのが楽しかったのが楽しくなくなった、いろいろな趣味があったのが、興味がなくなってしまったという方がおられます。こういう時は更年期障害ではなく、「うつ状態」の時もあります。この場合お薬がよく効きますので医師と相談しましょう。

5.家族、友人とのつき合い

家族同士の結びつきも大切です。家族との旅行や団らんも更年期の悩みの解決に役立ちます。友人同士との会合や、サークルに入るあるいはカルチャースクールに通うという方法もあります。
ボランティア活動を行ってみて、むしろ自分の悩みが解決されたという方もおられます。

  1. それでも困った時があったら医師と相談をしましょう。

更年期障害と紛らわしい病気  (1)心身症

(1)心身症

心身症というのは心に問題があるのですが、実際には身体のどこかに異常な症状が出る病気をいいます。その身体に出る症状は喘息や糖尿病など、心の問題とは全く気付かれないような時があります。


症状

  1. 心身症が疑われる症状

    過換気症状、食欲不振、過食症、肥満症、過敏性腸炎、睡眠障害、パニック障害、頭痛症、肩こり、腰痛症
    月経に関する異常(生理痛、月経不順・・・無月経など、月経前のうつ気分)

  2. 一般的な病気と区別しにくい症状

    高血症、気管支喘息、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、狭心症 など。

これらの症状はもちろん心身症が原因の全てではありません。
心身症では、1つの症状が良くなると別の症状が出てくることがあります。
うつ状態や神経症といった神経科・心療内科的な病気がある時があります。


原因

  • 会社や学校あるいは家庭内でのストレスが原因になる時があります。
  • 多忙が原因になる時があります。
  • 年をとる事が気になっておこる事があります。(老いを感じる時など)

治療

  1. まず本当に身体のどこかに異常がないか調べる事が大切です。
    例えば動悸があれば内科・循環器科でチェックなど
  2. 次に心身症と診断をうけたり、心身症の部分があると言われた時は、神経科や心療内科などの専門医の診断をうける事が大切です。
  3. 医療機関あるいは公的な機関(例えば保健所など)のカウンセラーと相談する方法があります。
  4. 音楽療法などは有効です。また他の方法、− 読書や絵を描く事など −も試してみるようすすめられる時があります。
  5. 気功やヨーガ等も有効な時もあります。
  6. お薬を使用すると良くなる事が多いのですが、長期間用いられる事があります。
  7. 月経不順や、更年期障害と似た症状が出た時は婦人科からお薬が出る事があります。

パニック障害


パニック障害という言葉が最近よく聞かれます。
主な症状は特別に強いストレスをうけている訳ではないのですが、突然不安感を感じたり、冷汗や動悸、あるいはめまい等の症状が出たりするものです。
すぐに病院に行かなければと心配になります。
こうした症状は早くに良くなるのですが、比較的短時間のうちに再発する事があります。こうした症状は医師とお話をし、適切なお薬を内服すると改善します。
あせらず病院を受診しましょう。|

更年期障害と紛らわしい病気 (2)自律神経失調症

自律神経とは自分の意志ではコントロールできない神経の事をいいます。

例えば心臓を動かす神経、汗のコントロールなど。

この自律神経に異常が出るのを自律神経失調症といいます。

自律神経の中枢は主に脳の視床下部にあると考えられています。この部分は女性ホルモンの働きの中心部分でもあるため、自律神経失調症状がある時はホルモンバランスのくずれが出る時もあります。

症状

多汗、冷汗、熱感、冷え性、動悸、頭痛、腰痛、腹痛、肩こり、めまい、食欲低下 便秘、下痢、膀胱炎症状(頻尿、排尿痛など)、不眠、疲労感、うつ状態などの精神症状が出、日によって症状が違っていたり、痛い場所が変わる事がよくあります。

原因

  • 疲労やストレスが原因になる時があります。
  • 身近な人との別れ(卒業や就職、結婚などで子供が家を出た後、配偶者の死亡など)
  • 年令的なものが原因になる時もあります。

治療

  1. 心療内科や神経科の受診がすすめられます。精神安定剤などが処方されます。
  2. 漢方薬が用いられる事があります。
  3. ホルモンの異常が一緒にあると判断される場合はホルモン剤が用いられる事があります。

更年期障害と紛らわしい病気 (3)うつ状態

  • うつ状態とは、気分が落ち込んでしまう感情の病気と考えられています。 しかし、この状態は時期が来ると必ず治る病気と考えられています。
  • 女性にとってうつ状態が出やすい時期があります。
    1. 更年期の頃
    2. 月経前
    3. お産後
    4. ある種のお薬を内服した後 例えば降圧剤(種類によります)、コレステロールを下げるお薬など
    5. 実際にどこかに病気がある時 例えば脳血管の病気、甲状腺の病気、糖尿病、膠原病、ウィルス性の風邪の時もおこる事があるとも言われております。
  • うつ状態になり易い性格の人がいます。 必ずしもではありませんが性格的にうつ状態になり易い人がいると考えられています。
    1. 几帳面な方、完ぺき主義の方、仕事を人にまかせられない性格の方
    2. 仕事熱心な方、休日でも仕事に出るような方、責任感の強い方
    3. あまり融通のきかない方
    4. 正直者ですが小心な方
    5. 他人の意見を気にする方など、
  • うつ状態になるきっかけがある時があります。
    1. 仕事や家庭内の事でストレスがたまった時
    2. 親しい人との別離(肉親の死など)
    3. 転職、転勤、引越しなど環境の変化があった時
    4. 月経の前、妊娠や出産など女性のホルモン環境の変化があった時
    5. 季節が影響することがあります。例えば秋になると症状が出やすいなど。

仮面うつ病
本当はうつ病なのですが、別に病気があるような症状が出てくるため、身体的な病気があるように思えるものを言います。例えば、腹痛が強く病院を受診したのですが、内科にも婦人科にも病気がなく、うつ状態が原因という時があります。

仮性痴呆
老年期になって出てくるうつ症状は、一時的にぼけの症状が出てきたように見えることがあります。 これを仮性痴呆といいます。
警告うつ病
症状はうつ症状ですが、もとは他に病気(例えば胃がんなど)があり、その初期の症状としてうつ症状が出てくる時があります。 これを警告うつ病といいます。
荷おろしうつ病
重い負担が加わったために、とても頑張られた後、ほっとした時に出てくるうつ病あるいはうつ症状をいいます。

診断

専門医の診断と適切な治療をうけると必ず良くなります。東邦大学の自己診断チェックなど、いろいろな自己診断のリストがあります。うつ症状かなと思われた時はまず医師の診察をうける事が大切です。また症状に気づいた家族の方が予め病院に行く方法もあります。早目に受診されると、それだけ早くに良くなる可能性があります。

治療

  1. 医師との相談が必要です。
    • 薬がよく効きます。
    • お薬は症状に応じてたくさんの種類があります。
    • 薬は医師の指示があるまでは止めない事が大切です。
    • 再発する事があります。再発してもあせらないで医師と相談しましょう。
  2. 精神的にも身体的にも休養が有効です。
    • 症状の程度により、仕事の内容を軽くすること、他の人のサポートをうけること、時には休養することが必要な時があります。
    • また症状によっては、入院が必要な時もあります。
  3. 周囲の人々の心構えも大切です。
  4. 悩んでいる人を励ましたり、なぐさめる事はかえって逆効果の事があります。
  5. 「以前のあなたのように頑張りなさい」「気晴らしに旅行をしたら」などと言うのは よくないとされています。
  6. 「うつ状態ではひたすらやさしく支えてあげ、暖かく包んであげる事が大切」(河野先生)だと考えられています。
  7. 婦人科とうつ症状

    月経不順などホルモンが関係すると思われる時は婦人科でホルモン剤が処方される事もあります。 |慢性疲労症候群とうつ症状
    多忙な生活をしていた方が、急に疲労感や倦怠感を訴え、うつ症状のような症状が出る時があります。
    急に症状がおこり、同時に風邪のような感染症状を伴う人がいることから、何らかのウィルス感染症という考えがあります。 この病気は現在研究中です。

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