卵巣がん

Chapter 6 卵巣がんの治療

1.手術による方法

手術の種類 手術の種類

手術についてはがんの種類、進行の程度などから詳しく医師からお話があるのが普通です。

A 卵巣・卵管のみの手術

①特殊な時は卵巣の腫瘍の部分だけを切除する時があります。
②片側の卵巣・卵管の切除

B 根本的な手術

①両側の卵巣・卵管の切除+子宮を全部切除
両方の卵巣にがんがある事が疑われる時はその間にある子宮にもがんがある時があります。

②大網切除
お腹の中を覆っているエプロンのようなもので、ここに卵巣がんがよく転移します。

③リンパ腺の切除

④虫垂の切除を行う時があります。

⑤子宮や卵巣の隣にある腸の切除や膀胱の切除(部分切除を含む)などを行う時があります。

⑥肝臓などに転移がある時は、この部分を切除する時があります。
①→⑥までの組み合わせで手術がすすめられる時があります。

C 試験開腹

一度お腹をあけるのですが、がんの広がり方から、その場では根本的ながんの切除を行わず、その次の治療のための観察と検査を行うだけの時があります。
この手術の結果をふまえて、次の有効な治療がいろいろ考えられます。

がんが進行した状態でみつかる時があります。 がんが進行した状態でみつかる時があります。

残念ながら卵巣がんはⅢ期やⅣ期の状態で見つかる時があります。最初の手術で腫瘍をかなりの部分切除し、残った腫瘍の大きさが、2 ㎝未満になったものは、その後抗癌剤を用いたり、抗がん剤使用後に再度手術を行うと治療効果がさらに高くなる事が分かっています。
Fantani F ら、Oncology65:316-322,2003
現在のがんの治療の進歩は目ざましいものがありますから、Ⅲ期がん、Ⅳ期がんと言われても医師と相談の上、明らかな治療があると考えられる治療を積極的にうけられる事をおすすめ致します。

卵巣がんの方で赤ちゃんを望まれる方はどうしたら良いでしょう。 卵巣がんの方で赤ちゃんを望まれる方はどうしたら良いでしょう。

卵巣がんの方で条件によっては、良い状態の卵巣を残し、将来赤ちゃんを生む事が可能な時があります。いろいろな条件がありますので専門医とよく相談しましょう。

1、卵巣がんの組織型が大切です。

①卵巣がんⅠa期の方、また顕微鏡でみて正常の形に近いタイプの方。
(高分型といいます)但し明細胞がんの方は対象にならないと考えられています。
②境界悪性腫瘍の方

2、手術の結果が大切です。

①完全にがんの部分が切除されたと考えられる手術がなされなければなりません。

・悪性の部の付属器(卵巣や卵管)の切除
・反対側の正常と思われる細胞の一部を念のため切除→検査する時があります。
(これは目でみて正常と判断される時は検査しなくても良いと判断される時があります。)
・お腹の中に目に見えないがん細胞が広がっていないかの検査(細胞診検査といいます)が必要です。
・必要ならリンパ腺を切除する事をすすめられる時があります。
・この他手術をうけた後判断が変更される可能性がある時もあります。

3、手術後念のため抗がん剤の使用がすすめられる事があります。
将来赤ちゃんに悪い影響が出る事のないような配慮をなされなければいけません。
主治医から詳しくお話があるのが普通です。
術後の抗がん剤使用については、いろいろな要素の組み合わせで決定されますから、直接治療にあたってくれた医師と十分な話し合いが大切です。

4、手術後も定期的な管理をうける事が大切です。

手術を行う前、あるいは後に予め治療を行ったり、2 度目の手術を行う事があります。 手術を行う前、あるいは後に予め治療を行ったり、2 度目の手術を行う事があります。

卵巣癌の方は、その症状によりいろいろな治療法が異なる事があります。先程からあげている癌の種類、分化度、進行の度合の他、癌にかかった方の年令や、合併症の有無も関係します。いわば卵巣癌の治療はオーダーメイドのようなものです。

例えば…

根治的な手術のみ
根治的な手術 → その後の抗癌剤治療
根治的な手術 → 後の抗癌剤治療 → 再度手術 → 抗癌剤治療
※抗癌剤の治療 → 根治的な手術
抗癌剤の治療 → 根治的な手術 → 抗癌剤の治療
試験開腹 → 根治的な手術 → 抗癌剤の治療

※この他腫瘍のある部位によっては放射線治療をすすめられる時もありますし、セカンドルックと言って腹腔鏡を用いたり、開腹術を行って癌がどの程度良くなったか、観察することをすすめられる時もあります。

※抗癌剤治療 → 根治的な手術は現在有効な治療法になるか研究中です。今のところ良好な治療効果が期待されています。

■進行した癌では手術でどれだけ癌組織をとり除いたか、言いかえるとどの程度とれなかった部分が残ったかで治療後の経過が違うという研究が多くあります。
卵巣癌はⅢ期以上で見つかる方が多いのですが、この時は癌組織が広がっている方が多いと考えられています。

Ⅲ期、Ⅳ期のがんで見つかった方で、最初の手術で腫瘍をかなりの部分切除し、残った腫瘍の大きさが2 ㎝未満になったものはその後抗癌剤を用いたり、抗癌剤使用後に再度 手術を行うと治療効果がさらに高くなる事が分かっています。
(Fantani F ら。Oncology 65:316-322 2003)
現在の治療の進歩は目ざましいものがありますからⅢ期癌、Ⅳ期癌と言われてもあきらめず医師と相談の上、明らかな効果があると考えられる治療をうけられる事をおすすめ致します。

手術方法の選択と危険度、また手術後の経過 手術方法の選択と危険度、また手術後の経過

[1]手術の前に手術の方法について詳しく説明があります。

1、手術の前にどの様な手術を行うかほぼ予測出来る時があります。
例えば初期の癌で卵巣や子宮を切除するだけで良い時などは、手術前の診断通りの手術で済む事があります。

2、手術を行ってみて、初めて、切除範囲が決まる時があります。
それでも腸の切除などが予測される時は予めその準備がすすめられる時があります。
このような時は主治医からこういう状態になっていたらこういう手術、こういう状態ならこういう手術と想定される状態を考えて手術の方法の説明があります。

3、時として、予想された以外の状態があり、手術方法が変更になる時もあります。

4、最近はリンパ腺の切除は腹腔鏡下に行われる時があります。この際の身体の負担は小さい事が普通です。

手術の前に抗癌剤を使う方法
癌が比較的広がっている場合は、手術の前に抗癌剤を用いると驚く程癌の広がりが縮小し、手術がし易くなる時があります。これをネオアジュバンドケモセラピーと言います。
N eo Adjuvant Chemotherapy(NAC)
これまではいろいろな抗癌剤が用いられ、それぞれ効果を確かめられてきましたが、最近パクリタキセルとカルボプラスチンの併用が治療方法として科学的根拠があると推奨されるようになりました。(日本婦人科腫瘍学会http://www.jsgo.gr.jp /)

手術の後に抗癌剤を使う方法
手術が終わった後、再発が起きないように抗癌剤を用いる時があります。
これを維持療法といいます。
この場合もパクリタキセル+カルボプラスチンが使われる事が多くなりましたが、パクリタキセルのみ、カルボプラスチンを含むプラチナ製剤、CAP 療法(サイクロフォスファマイド+アドリアマイシン+シスプラチン)などいろいろな組み合わせが考えられます。
必要と考えられる時は今迄のお薬の効果や副作用などを考えて、医師が計画をたてて、提案があるのが普通です。よくお話をしましょう。

[2]手術の副作用などの説明もあります。

予測される手術時間、出血量、手術後の腸の動き易さ、静脈血栓症の可能性など、長時間の手術が行われる可能性のある卵巣癌の手術の際にはいろいろな副作用が考えられる時があります。しかし例えば出血については、輸血の準備が行なわれたり、静脈血栓症に対しての予防処理が考えられたり、予め副作用予防の為のいろいろな準備がなされます。このため手術に関する危険度は大幅に減っています。
十分な説明を聞かれたら、手術前は精神的にリラックスし、体力・気力を十分に保つようにしましょう。
なお手術前、心臓や肝、腎臓の機能のチェックや出血し易い体質がないか、糖尿病や高脂血症の傾向がないか、感染症がないか等の検査がいろいろあります。これらを術前検査といいます。結果については医師から説明があります。

[3]手術後の経過

(1)手術で手術前の予測通りであったら手術後は予めお話があった通りの治療が行われるのが普通です。
(2)手術をして初めて分かった事があった時、例えば腫瘍が予想外に進んでいた時やリンパ腺の転移が思いの外広がっていた時は、手術後に抗癌剤など追加の治療などの説明があります。手術前の診断法が進んだとは言え、またまだ手術をして初めて分かる事が多くあります。

◎セカンド・ライン化学療法
抗癌剤を使用した後に癌の再発があった場合に使用する抗癌剤の治療をセカンド・ライン化学療法といいます。先に使用した抗癌剤が有効だったと考えられる時は同じ抗癌剤による治療が優先されます。しかし抗癌剤治療をうけていても再発が早く、前の抗癌剤が有効ではなかったと考えられる時は別の抗癌剤が選択されます。
現在主に使用されているのは、パクリタキセル、ドセタキシル、イリノテカンなどですが、猶 幾つもの有効と考えられているお薬があります。

2.抗がん剤の治療

抗がん剤の主な副作用

①腎臓の機能が低下する時があります。
②白血球の数が減る時があります。
これらの症状が出た時は症状の程度によりいろいろな治療が必要になる時があります。
また白血球が減った時は、これを増やすお薬を使用する時もあります。
③脱毛
④毛足のしびれ感などの感覚の異常が出る時があります。
⑤肝臓の機能に異常が出る時があります。


 抗がん剤の副作用は時間が経ってから出るものもあります。
 また初期では軽くとも放っておくと急に悪くなる時もあります。
 自分で何かおかしいと思う所が出たら、我慢したりせず必ず医師にお話をしましょう。

卵巣癌にならないようにする、あるいは卵巣癌になっても早くに見つけて生命にかかわらないようにする方法はないでしょうか

①卵巣癌は女性がかかる癌の中では少ないものです。しかし最近卵巣癌にかかる方が増えてきている事、またこの癌は発見された時は進行した段階である事が多い事からやはり注意は必要です。

②お母さんや姉妹で卵巣癌になった人がいる時は定期的な検診をうけましょう。

③肥満のある人、多のう胞性卵巣という病気であると言われた人。10 年以上不妊の方は一応定期的な卵巣癌の検診をうけるようにしましょう。

④一番手軽な検診は子宮癌検診をうける時に超音波検診をうけ卵巣の大きさをチェックしてもらう事です。卵巣の最大径が30 ㎜以上(35 ㎜以上という説もあります)の時は 再チェックをうけた方が良いかも知れません。

⑤食べ物でも卵巣癌になるリスクが高くなる可能性があるかも知れないという考えがあります。しかし食べ物についてはリスクが多少高くなる可能性があるからと言って全て食べてはいけないという事ではありません。知識として持っていたらいかがでしょうという程度でしょう。要はバランスの良い食事をとる事が大切という事です。

・肉類やバターは卵巣癌のリスクの上昇に関係があるとの研究があります。
・ブロッコリーは発癌物質を外に追い出す物質をもっていると考えられています。
・トマト ニンジン ピーマン
  発癌物質の生成を妨害する可能性があるといわれています。

・かんきつ類とイチゴ
  中に含まれるフラボノイドが癌の予防になる可能性があると考えられています。

・大豆
  がんが広がる為に必要な毛細血管がつくられにくくなるという考えがあります。

・玉ねぎ にんにく
  発癌物質の作用をうち消す作用があるといわれております。

・アルコールの飲み過ぎに注意しましょう。

・タバコ 良い事はありませんね。

⑥日常生活も考えてみましょう。

・あまり真面目で周囲に気をつかいすぎる方は気をつけましょう。という話があります。
・よく言われていますが、笑う事、笑うチャンスが多い事はストレスから解放されてとても良い事だと考えられております。実際癌に患られた方の治療に利用されています。
・睡眠不足、ストレスは身体の病気に対する抵抗力をおとす可能性があると言われて おります。
・身体を動かす事、適度な運動は癌の予防になると言われています。

治療後の再発の可能性を何で判定するか

治療後の再発の可能性を何で判定するか

1、自覚的な症状が大切です。
治療後の痛み、お腹のはり具合、貧血症状、むくみなど自分で感じる症状(自覚症状)が大事な目安になる時があります。

2、超音波検査
外来で簡単にうけられる検査ですが、いろいろな情報が得られます。

3、CA125 の測定
採血するだけで、安全でしかも比較的精度の高いデーターが得られます。
卵巣がんの約80%の方にCA125 の値の異常が出ると言われております。このため例えば治療によって下がっていたCA125 が再度上昇した時などは要注意となります。
またこのCA125 の値は、他の検査より早くに警戒値が出る事があると考えられるために、何かあると早めに次の手をうけるという事にもなります。
・Picchio M らQJ Nucl Med 47;77-84 2000
・津田浩史 産科と婦人科 1183-1188 204

4、その他の腫瘍マーカーの測定
CA199、CEAなど治療に高い値が出ていた時はその値が再度高くならないかみる事は大切です。

5、貧血検査、血沈検査
貧血が出てきて要注意という時があります。

6、CT

7、MRI

8、PET

卵巣がんはなり易い体質というのはあるのでしょうか

卵巣がんはなり易い体質というのはあるのでしょうか

1)月経の期間が長い人(初潮−閉経までの期間が長い人)は卵巣癌になる確率が高くなる可能性があるとの研究があります。Fathalla MF ら Obest Gynecol Swrv,27:751-1972

2)10 年以上、不妊の方はリスクが高くなるという研究があります。また多のう胞性卵巣(月経不順があり、ホルモンに異常がある)の方は卵巣癌のリスクが高くなるという研究があります。

3)肥満の人、肥満になり易い人は危険因子をもっていると考えられています。
  これは脂肪組織の中にある女性ホルモンが関係する可能性があると考えられています。

4)1、2 親等の方で卵巣癌のある人は注意が必要と考えられています。

5)特殊な人ですが、遺伝的に卵巣癌になり易い体質をもっている人がおられます。

6)他の癌、例えば乳癌、大腸癌、子宮体癌などにかかった事がある方は、危険率が高まる可能性があるという研究があります。
  加藤秀則ら 臨床婦人科産科 57 26-29、2003

7)乳癌、胃癌などにかかった事がある方で卵巣に転移が起きやすい時があります。
  これをクルッケンベルグ腫瘍といいます。

8)子宮を切除された人は、卵巣癌になる確率が低くなるという研究があります。しかし、これも検査をうけないで良いという証拠にはなりません。
  高野浩邦ら 産科と婦人科 69;1179−1186 2002

9)一生の間で排卵の回数が多いと卵巣癌になる確率が高くなる可能性があるという事から排卵回数が減る機会の多い方は卵巣癌になりにくくなるという考えがあります。
  a)お子さんを沢山生んだ方
  b)ピルを長時間服用された方など。

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