子宮頸がん

Chapter 8 子宮頚がんとHPV(ヒトパピローマ ウイルス)

子宮頚がんとHPV

HPVウイルス

現在の所子宮頚がんの原因になる可能性のあるパピローマウイルスは100種類以上ある事が分かっています。
この中で将来癌になる可能性のあるハイリスクグループと、それだけでは癌になる可能性のないローリスクグループに分かれると考えられています。
最近このパピローマウイルスの感染があるか、ハイリスクかローリスクかが分かる様になりました。
またどのタイプ(タイピングと言います)であるかという、より詳しい検査も可能となってきました。
現在の所、ヒトパピローマウイルス検査(HPV検査)の検出の感度はとても高いと考えられています。
一方で癌検診の最初のステップである細胞診検査は100%もの精度をもつものではありません。このため、この2つの検査が同時に出来れば癌検診としては大きな力になるのは分かっているのですが、今の所幾つかの問題点があります。

 HPV検査で陽性と出ても、それだけで将来癌になるとは限らないと考えられている事、この点は将来さらに研究が進むと、明らかになる事が増えるでしょう。

 HPV検査が1度陽性と出ても、次に消える事があるため、今の所HPV検査だけに頼らず、他の検査も必要であろうという事。

 保険が効かないため、健康診断としてはやや費用がかかる点などです。

HPVとワクチン


①はじめに
HPV(ヒトパピローマウイルス)は今膣内に約40種類位感染する可能性があると考えられています。
この中で将来がんになる可能性のあるハイリスクと考えられているウイルスがいます。
なかでも16型と18型は悪性になる可能性が高いと考えられています。
欧米では、16型・18型が多く
日本では、16型・31型・58型などが多いと考えられていますが、日本でも若い女性を中心に18型が増えてきているようです。

②現在考えられている子宮頚がん関連HPVの型
16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、69、73、82型など

③検査法と費用
幾つかの検査法があります。
細胞診検査という子宮がん検診と同じ方法で行われる事が一般的です。

1. 検査の結果
 ・結果が、16型・18型など型が出てくる検査法があります。
 ・型は出ないものの、ハイリスクかローリスクかが分かる方法があります。
 ・その中間のタイプがあります。

2. 費用は検査法によって違います。HPV感染があるかどうかだけを調べるのでは、保険が効きません。しかし細胞診+組織検査を行った後での、検査の結果によっては保険が効く場合があります。
これらについては担当医が相談にのってくれるでしょう。

④HPV検査結果が出たらどうしたら良いでしょう。

1. ハイリスクの中でも16型や18型が出た場合は要注意です。今、細胞診検査の結果、クラス分類でⅢaやⅢb、ベセスダ分類でLSILやHSIL、組織検査で軽〜高度異形成上皮が出ている場合は、何らかの治療がすすめられたり、慎重な経過観察がすすめられる時があります。
今細胞診等の検査で異常が出ていなくても、HPV陽性の時は専門医のアドバイスを聞く事が大切です。

2. 16型や18型以外のハイリスクでも、今細胞診、コルポ診、組織診で異常が出ている人は、やはり専門医との相談が必要です。
特に、31,33,35,45,52,58型の人は注意しましょう。

3. ローリスクであっても、細胞診に異常が出ている時は安心してはいけません。医師のアドバイス通り、定期的な通院が必要です。

4. 今のところ、初期のがんになった人でも100%HPVが検出出来ている訳ではありません。まだ未知のHPVがいたり、別の原因でがんになる可能性が完全にOとは言えません。このため今までの癌検診は必要と考えた方が良いでしょう。

5. 但しがん検診にHPV検査を併せて行うと検診の正確度が極めて高くなると考えられています(因みに日本の細胞診検査の精度は高いのですが、外国では50%位の精度しかないという調査があります。これにHPV検査を加えると100%近くになるという調査があります)

6. HPV感染が2種類以上ある時、特にハイリスクが2種類以上ある時はより注意が必要と考えられるようです。

⑤ワクチンの内容

ワクチンには2種類あります。
1. サーバリックス®とガーダシル®です。
この2つのワクチンについては簡単な比較をすると次の通りです。

サーバリックスガーダシル
予防するHPVの型 16、18 16、18、6※1、11※1
投与する時期初回、1ヶ月後、6ヶ月後(初回から)初回、2ヶ月後、6ヶ月後(初回から)
アジュバント※2 ASO4アルミニウムヒドロキシホスフェイト
有効期間 ⑥を参考にして下さい。
 なお、担当医とも御相談下さい。 

※1 6型と11型は、子宮頸がんになるタイプではありません。
  6型と11型は、主に外陰部に出来る尖圭コンジローマという病気の原因になります。

※2 アジュバントというのは、抗ウイルス作用を強め、長期間作用を維持するために使用されます。

⑥ワクチンはどの位効いているのでしょうか。

ワクチンが使用され始めて8年以上経過していますが、今のところ効果が持続していると考えられています。
また、研究者によるデータではもっと長期間の効果の持続が推測されていますが、どれだけ持続するかは、直接担当医とお話をしておいた方が良いと思います。

⑦費用はどの位かかるでしょうか。

今の所このワクチンは自費治療です。
3回合わせて数万円(5万〜6万円)かと考えられていますが、ワクチンを投与している病院に予め問い合わせた方が良いでしょう。

⑧HPV16型、18型の人にもワクチンを投与する意義はあるでしょうか。

HPV16型と18型の人に効果のあるワクチンですから、16型や18型に既に感染している人には理論的には直接の予防効果がありません。
また、ウイルスが一度消失した場合(自然、手術後など)にワクチンを接種し、再感染を予防しようという考えがあります。
これをcatch up接種といいます。

⑨このワクチンは他のHPVには効かないのですか。

HPVウイルスは似たような性格をもったタイプがあります。このため16型、18型を対象としたワクチンでも、他のタイプに効果があると考えられています。しかし16型、18型を完全に抑え込む程の力はもっていないようです。

⑩妊娠中のワクチン投与は−1−

妊娠中のワクチンの接種は認められていません。まだ副作用のデータが集められていないからです。

⑪妊娠中のワクチン投与は−2−

子官頚がん予防のために、HPVワクチン投与をする事が広がりつつあります。

日本でも諸外国にならって、地方自治体で公費による小中学生のワクチン投与が始まっています。

 さて、このワクチンは妊娠中の投与は勧められていません。
アメリカのFDA(食品や薬剤の安全性に関する専門機関)では、カテゴリーBに分類されています。
これは、動物実験では胎児に異常を起こす事はないけれど、人間では実験が行われていないという意味です。

 最近アメリカの産婦人科専門雑誌OB-GYに相次いで妊娠中のHPVワクチンの影響についての論文が出ました。


ワクチン投与中に妊娠と分かった人517人を調べた調査では、①自然流産の比率も②胎児奇形の比率 もワクチンを投与しなかった人達に比べて差はなかったそうです。
またワクチンの効果や副作用についての試験を行っていた時の調査では、ワクチンを投与中に1796名の人が妊娠したそうですが、やはり自然流産率、胎児死亡率、奇形率に差がなかったそうです。



 ただし、これらの数だけでは、まだ結論的な事は言えないとの事です。
妊娠中に使用した経験がもっと集まらなければ、科学的な証明とは言えないからです。
今の所、

1. 妊娠中のワクチンの投与は勧められないという事は変わらないようです。

2. また3回目のワクチン投与後1ケ月間は妊娠しない方が良いとされています。

3. しかしもし妊娠した時は、妊娠中絶をしなければならない理由はないとされ、この事は日本の産婦人科の専門医の会でも確認されています(日本産婦人科医会)。



⑫男性のワクチン投与は

今のところワクチン投与の対象は女性だけで、男性への投与は考えられていません。

⑬ワクチンが出来た以上、HPVの治療薬は出来ないのですか。

ウイルス性の病気に対する、抗ウイルス剤はいろいろな病気に対して開発されています。
例えば、尖圭コンジローマ、ヘルペス等々です。
HPVに対する抗ウイルス剤も研究中のようですが、今の所まだ完成していないようです。

⑭HPVワクチンについての幾つかの質問

1. どんな人が対象になるか。
2. 子宮がん全部に効<のか。
3. ワクチンを使ったら、もう子宮がんにならないのか。
4、 今後の子宮がんの検診はどうしたら良いか

等、質問が沢山あると思います。

当ネットにも幾つかのポイントが出ていますので御利用下さい
( 女性の病気 : 婦人科の病気 ‐ 子宮がん−子宮頸がん Q and A)。
なお詳しくは担当医からの説明をうける事をおすすめします。

⑮ワクチンの副作用について幾つかあげておきましょう。

1. 注射直後におこる症状
 a)痛みを感じる人が多いようです(80%位の人と言われております)
 b)腫れ、発赤
 c)注射した部分のピリピリ感、むずむず感が出る事もあります。

2. 注射後からしばらくして出てくる症状
 a)発熱 風邪のような症状
 b)頭痛 めまい
 c)発疹 蕁麻疹様の症状が出る事があります(1−10%位)

3. 注射後の強い副作用に息切れ、息苦しさ、動悸や失神等の症状が出た人も僅かにいたそうです。これらの症状は担当医が速やかに処置してくれます。

4. なお、このため接種後30分位は病院で何も起こらない事を確認してから帰宅する事がすすめられています。

5. 副作用についての情報は、詳しくは各製品のホームページをご覧下さい。

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