赤ちゃんが欲しい方に

第7章 不妊の原因となる異常について

不妊の原因となる異常について

不妊の原因となるいろいろな病気 不妊の原因となるいろいろな病気

ここでは不妊の原因となるいろいろな病気のうち代表的なものをあげます。
またその病気の対策、治療法について考えてみましょう。

〔1〕排卵の異常
 ⓐ多のう胞性卵巣(PCO)
 ⓑ高プロラクチン血症
 ⓒ遅延型の排卵
 ⓓ早発卵巣不全
 ⓔ染色体異常
〔2〕卵管の異常
〔3〕子宮筋腫
〔4〕子宮内膜症
〔5〕子宮の形の異常
〔6〕クラミジア感染症・その他の感染性の病気
〔7〕不妊と関係のある他の病気
〔8〕免疫性の不妊
〔9〕環境と不妊
〔10〕男性不妊

1 排卵の異常 排卵のしくみ

脳の下の方にある脳下垂体は排卵の準備をするように命令するホルモン(卵巣刺激ホルモン=FSHホルモン)を出します。
脳下垂体のホルモンを受けて卵巣は排卵の準備をします。排卵の準備ができたところで脳下垂体から排卵しなさいという命令(黄体化ホルモン= LHホルモン)ホルモンが出て、卵胞が破裂し、卵が飛び出します。
排卵のためのホルモンは脳下垂体から一方的に卵巣に出るのではなく、卵巣の働きをみながら調節されます。これをフィード・バックといいます。
きちんとした排卵が起こるためには、これ以外にも甲状腺や副腎などいろいろな所から出るホルモンが関係しています。排卵に異常があると考えられる時は、これらのホルモンも考慮に入れながら検査を受けます。

【排卵の異常がないかをみる検査】
(1)ホルモン検査

さらに負荷テストといって、わざとホルモンを出す臓器を刺激させてみる方法もあります(LH─RHテスト、TRHテストなど)。それぞれ医師から説明を聞きましょう。
(2)一般の血液検査
   貧血、血糖、血沈など
(3)超音波検査
   子宮や卵巣の大きさ、卵巣の内の卵胞の状態、子宮内膜の厚さなどをみます。
(4)その他の検査
   その他症状に応じてはレントゲン検査、MRI検査などいくつかの検査をすすめられることがあります。

【原因】
原因はいろいろ考えられます。例えば
(1)仕事が忙しかったり、ストレスが強い時。
(2)ダイエットをしたり、神経性食欲不振(病気の範囲に入る食欲不振)の時。体重が元に戻っても月経不順が続き、治療が必要な時もあります。
(3)中高生を中心に若い女性で、部活など過激な運動が原因で無排卵になる時があります。
(4)特殊な例ですが、前回の分娩の時の大出血が原因の時があります。
(5)原因がはっきりしない時もあります。

【治療】
(1)原因がある時は、その治療が行われます。
(2)経口で排卵誘発剤を用いたり、注射の排卵誘発剤を用いることがあります。
(3)視床下部に問題がある時、視床下部から出るホルモンを用いることがあります。
 ※治療については医師とよくお話をしましょう。

排卵の異常がおこる病気

ⓐ多のう胞性卵巣(PCO─ PolyCytic Ovary)

卵巣に問題がある時の代表的な病気です。
排卵できるまで大きくなれない卵胞が、卵巣にたくさんできる病気です。無月経や月経不順が主な症状ですが、他に肥満や多毛が目立つ人もいます。
ホルモン検査を行うとLHホルモンがFSHホルモンより高くなっているのが特徴です。またLH─RHテストをすると独特の値が出てきます。
さらに副腎皮質から出るテストステロンやDHEA─Sといったホルモンが高くなる時があります。

【治療】
⑴薬を使う方法
まず排卵誘発剤として用いられるクエン酸クロミフェン(クロミッド…商品名)を使います。
この薬の抗エストロゲン作用がPCOに効果があると考えられるからです。

①内服薬の排卵誘発剤を用いる時
●クロミッド(商品名)単独で使う時
● 症状に応じて副腎皮質ホルモン(プレドニン─ 商品名)ドーパミン受容体作働薬(パーロデル─ 商品名)などを併用する時
これらの治療による排卵率は約60% と考えられています。薬を用いる時はその効果と副作用について主治医とよく相談しましょう。
クロミッドとメトホルミン(グリコラン─商品名)を一緒に用いると効果が上昇するという研究もあり、使用され始めています。

②注射による排卵誘発剤を用いる時
脳下垂体刺激ホルモン(ゴナドトロピン)という薬を用いることがほとんどです。ゴナドトロピンを主体にした治療の排卵率は約80% と考えられています。

⑵手術による方法
薬の効果が充分でない時は手術をすすめられることがあります。

①腹腔鏡下で卵巣に電気メスで穴をあける方法があります。(ドリリング(Drilling))
現在は手術療法としてはこの方法が主体です。薬による治療の効果がない時にすすめられることがあります。手術後排卵率は70〜80%、妊娠率は50〜70%という研究があります。

②卵巣を楔(くさび)状に切開する方法が試みられる時があります。
腹腔鏡下の手術が行われる前は、手術的な治療は大抵この方法でした。手術的な治療効果は高いのですが、時間が経つと効かなくなる場合があります。また手術を行った後、排卵誘発剤を用いることもあります。

ⓑ高プロラクチン血症

血液中のプロラクチンというホルモンが高くなり、排卵の異常が起こる事があります。このプロラクチンホルモンは乳汁分泌ホルモンと言われ、お産後赤ちゃんに母乳を与える時にたくさん出てくるホルモンです。
赤ちゃんに母乳を与えている時は、排卵があったり、規則的に生理が来るとお母さんにとって不便です。このためこのプロラクチンホルモンは母乳が出やすくなると同時に、卵巣の働きには抑制的に働きます。

〔原因〕
この高プロラクチン血症の原因は、
⑴ プロラクチンが出る脳下垂体に腫瘍がある時があります
⑵薬剤が原因の時があります。
・降圧剤 ・胃腸薬 ・向精神薬 ・高脂血症の薬剤 ・ピル服用後など(ただし、これらの系統の薬剤が全て原因になるという訳ではありません)
⑶流産後やお産後に出る時があります。
⑷原因が不明の時もあります。

【治療】
治療は原因が分かっている時は、その原因を積極的に治療する事が必要です。
⑴ 下垂体腫瘍の時は手術をすすめられる時があり
ます。ただし小さい腫瘍の時は内服薬で治療する時もあります。
⑵ 常用している薬剤が原因の時は、常用している薬剤を変えてもらう事があります。また量を減らす事で症状が改善する時もあります。
⑶ プロラクチンを低下させる薬剤を用いる時があります。
ドーパミン作動薬という薬剤があります。
(パーロデル─ 商品名)(テルロン─ 商品名)(カバサール─ 商品名)

ⓒ遅延型の排卵
排卵があってもいつも遅れる方は、妊娠する確率が低くなる時があります。普通は月経の第1日目からみて14日目位に排卵しますが、これが21日目以降になると妊娠率が低下する可能性があると考えられています。
こうした時は主に排卵誘発剤を用い、排卵が早目に起こるよう治療を受ける時があります。

ⓓ早発卵巣不全
40歳以下の女性で無月経が起こり、卵巣から分泌されるエストロゲンの低下やプロゲステロンホルモンの低下が起こります。その結果、卵巣を刺激する脳下垂体からのゴナトトロピンホルモンが上昇するのが特徴です。
しかしこの状態では自然に排卵が起こることもあり、タイミングが合えば妊娠する時もあります。いろいろなお薬が試されるでしょう。

ⓔまれに、染色体に異常がある時もあります。血液検査で分かりますが、医師から詳しい説明があります。

2 卵管の異常 卵管の異常

卵管は、
①排卵された卵を吸い込む所であり②精子の通り道であり③授精の場となります。また④授精した後の授精卵(胚といいます)の成長にとって重要な場所でもあります。このため卵管に異常が起こると、妊娠へのハンディのもとになります。

卵管の異常はいろいろな場所にできます。また原因もさまざまです。原因やどの程度異常が続いたかにより、回復率が異なります。
例えば一般的に、卵管結さつを行った後の再開通手術は、卵管そのもののダメージは少ないため手術後の機能の回復率は高いと考えられています。
一方で、卵管溜膿腫や溜水腫は異常が起こってから症状が出るまでの期間が長いため、治療をしても機能の回復率は低いと考えられています。

【検査】
(1) 子宮卵管造影(HSG)
(2) 卵管通気検査
(3) 卵管通水検査
(4) 腹腔鏡検査
(5) 卵管鏡検査
検査法については45ページをご覧下さい。一般的には子宮卵管造影が主な検査方法になります。

【治療】
いくつかの方法がありますが、ここでは代表的な方法をあげておきましょう。
(1) 通水法
 子宮口から水を入れて卵管を通す方法です。完全な閉塞の時は効果はあまり期待できません。

(2) X線透視下卵管開口術
 レントゲンで見ながら卵管に細い管を通し、そこから造影剤を入れたり水を通すことで卵管の通りをよくする方法です。これをX線の透視下で見ます。

(3) 卵管鏡下卵管形成術
 FTカテーテル法(Falloposcopic Tuboplasty)といいます。子宮の内腔を通して卵管の子宮側の開口部からカテーテルという細い管を入れます。このカテーテルの先にバルーンという管がついており、このバルーンの圧力を調整して太くしたり細くしたりして、卵管の狭窄部や閉塞部を拡大する方法です。これらを子宮の頚管に通して子宮鏡で見ながら行う方法と、腹腔鏡を併用する方法があります。

(4) 手術による方法
 ・腹腔鏡下で行う手術
 ・開腹手術
 手術を行うことで卵管を通すようにします。

(5) 卵管が関与しない妊娠方法としては体外授精がすすめられる場合があります。



元来、体外授精は卵管に異常があった時にすすめられる治療法でした。現在は卵管に異常がなくても、なかなか妊娠できない時は、積極的に体外授精をすすめられることが多いようです。体外授精については80ページをご覧下さい


3 子宮筋腫 子宮筋腫

子宮筋腫は成人女性の4、5人に1人の割合で起こる病気です。
自覚症状がなく、成人病検査や婦人科がん検診の時に初めて子宮筋腫を指摘され驚かれる方もおられます。子宮筋腫はいろいろな所にできます。

【症状】
(1) 子宮筋腫が大きくなると、いろいろな痛みが起こる時があります。
 ・腹痛、腰痛、生理痛

(2) 月経量の増加や、月経が長期間継続することがあります。
 ・レバーの様なかたまりが出る。
 ・少量でも、長く出血がつづくため日常生活にも差し障りがある。

(3) 貧血症状が出ることがあります。
 ・目まい、立ちくらみ
 ・息切れ、動悸
 ・顔色が黄色い、あるいは青白くなる  
貧血の程度は血液検査で判定されます。女性の場合、ヘモグロビン濃度(血色素量ともいいます)が11.5g/㎗以上が正常値です。

(4) 頻尿(尿に行く回数が増える)になる時があります。

(5) 不妊の原因になることがあります。赤ちゃんが欲しくて診察を受け、初めて子宮筋腫を指摘される場合もあります。

[子宮筋腫はなぜ不妊症の原因になるのでしょうか。]
子宮筋腫が必ず不妊症の原因になるとは限りません。かなり大きな子宮筋腫があっても妊娠できることもあります。
一方で、40歳近くまで赤ちゃんができず、子宮筋腫の「こぶ」(筋腫核)を切除したら妊娠できた人もいます。子宮筋腫だけが妊娠の障害になっていた場合は、この手術が有効な時があります。子宮の内腔(粘膜下)に子宮筋腫が出ていれば、避妊リングが入っているのと同じ理由で、なかなか妊娠できません。
子宮内膜の周囲に子宮筋腫ができれば授精卵が着床できず、妊娠しにくくなることが考えられます。

【治療】
薬による治療と手術による治療があります。
子宮内膜症と同様、閉経期になると子宮筋腫は小さくなるため、薬による治療は身体のホルモン環境を閉経期と似た状態にする方法が主体です。また他の薬による治療法もあります。

(1) 薬による治療
 ①出血が多く、長く続く時はホルモン剤を使う時があります。
 ・卵胞ホルモン単独
 ・卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤(ピルのことです)
 ②漢方薬を用いる時があります。
 ③Gn-RHアナログを用いる時があります。
 ④男性ホルモン作用のある薬を用いる時があります。
※子宮筋腫に女性ホルモン剤を用いる時は、ホルモン剤の内容によっては逆に子宮筋腫が大きくなるなどの副作用が出る時もあります。使用に際しては医師から詳しくお話があるでしょう。

(2) 手術による方法

①開腹手術による子宮筋腫核出術
腹部を切開して子宮筋腫の全部を切除する方法です。
超音波やMRI検査で、筋腫のある位置、大きさ、数をあらかじめ予想しておくことが大切です。
手術後は、再発する可能性があることを考えて、妊娠を希望する場合は早目に妊娠のための検査・治療をされることをおすすめします。
当院のデータでは、子宮筋腫核出手術を受けた人のうち約50%の人が妊娠できました。
他に不妊の原因がない場合は、年齢にかかわらず手術後の妊娠の確率は変わらないようです。

②腹腔鏡下手術による子宮筋腫核出術
子宮筋腫は腹腔鏡下でも手術できます。ただし子宮筋腫が大きい時、多数ある時、子宮筋層内に入り込んでいる時などは開腹手術がすすめられることがあります。

③子宮鏡下の手術
粘膜下筋腫だけの時は子宮鏡で子宮の中を見ながら筋腫核出術を行うことが出きます。

④子宮動脈塞栓術(UAE-Uterine Artery Embolization)
子宮に栄養を与える血管をつまらせて子宮筋腫を小さくする方法です。子宮筋腫は30〜70%位の大きさに小さくなると考えられていますが、子宮筋腫を全部切除してしまうほどの効果は期待できないかもしれません。
現在のところ、赤ちゃんを希望するためにこの方法を選択することは、賛否があります。
ただしこの治療法で妊娠された方も多数いることは事実です。
なおこの手術はよる発熱、疼痛、手術をしなければならない出血などの副作用も起こりえる言われておりますので、手術希望の方は予め医師と詳しくお話をしておきましょう。

(3) 体外授精をすすめられる時があります。
年齢や子宮筋腫の大きさ、数、位置、今までの治療の経過などを考えた上で、早目に体外授精などの積極的な不妊治療をすすめられる時があります。



●薬による方法として
主にGn-RHアナログという薬が用いられます。
・注射薬 
 リュープリン(商品名)、ゾラディックス(商品名)、スプレキュアMP(商品名)
・点鼻薬 
 スプレキュア(商品名)、ナサニール(商品名)、ナファレリール(商品名)、イトレリン(商品名)
・内服薬 
 ボンゾール(商品名)

薬をすすめられた場合は、なぜ薬をすすめられるのか、その薬の効果、使うメリット、手術に比べ有利な点は何かなど話を聞くことが大切です。年齢、子宮筋腫の大きさ、数、他の不妊の原因などいろいろな要素が関係する可能性があります。

●しかしこのことは手術の時も同様です。手術によって確実に子宮筋腫だけ切除できるのか、副作用は、再発の可能性は、など詳しく説明を聞きましょう。手術に関しては一人の医師の説明を聞くだけでなく他の医師の説明を聞くことが大切な時もあります。これをセカンド・オピニオンといいます。
この時はあらかじめ予約をして診察を受けられる方が良いでしょう。


4 子宮内膜症 子宮内膜症

本来子宮の内側に存在する子宮内膜組織が別のところにできる病気を子宮内膜症といいます。

【症状】
(1) 月経痛
(2) 月経量の増加、月経期間の延長
(3) セックスの時の痛み
(4) 月経の時以外の痛み
(5) 異所性の子宮内膜症の時はいろいろな症状が出る時があります。
・膀胱にできた時─ 月経時に限って血尿が出る
・直腸にできた時─ 月経時に血便が出る
・帝王切開の傷跡にできた時─ 月経時に傷跡から出血する など
(6) 不妊の原因になる時があります。

[子宮内膜症はなぜ不妊の原因になる可能性があるのでしょうか。]
いろいろな原因が考えられますが、子宮内膜症と不妊については、次のような研究があります。
原因不明の不妊症では、何も治療しなかった場合21.2%の方が妊娠します。また排卵障害のある方では、何も治療しなかった場合でも9.2%の妊娠率です。しかし子宮内膜症の重症の場合は、何も治療しなかった場合1.1%しか妊娠しないというものです。

【検査】
(1) 問診─ 腹痛・腰痛・月経痛・過多月経などがあるかどうか。
(2) 内診─ 子宮や卵巣の大きさ、圧迫されて痛い所がないか、異所性の子宮内膜症がないかが分かります。



中高生や内診を受けたくない時はあらかじめ産婦人科医に伝えておきましょう。内診を行わない治療法もいろいろあります。お母様が代わりに行ったり、お話だけで婦人科医と相談する事も可能です。あらかじめ産婦人科に確認しておくことが大切です。




(3) 超音波検査─ 腹部からみる超音波検査、腟の方からみる超音波検査の方法があります。
なお腟の方からの検査を希望されない方はあらかじめ伝えておきましょう。
(4) 血液検査
・腫瘍マーカー検査
 CA125 を測定するのが普通ですが、最近はCA125 が正常でもCA19-9が高い時もあり、いくつかの検査を行う事があります。ただし現在のところこれらの検査の中で、子宮内膜症としては保険が効かない項目があります。

・貧血検査
 子宮内膜症の時は貧血を伴う時があります。
 また今後の治療を考えてあらかじめ肝機能などをチェックするようにすすめられる時もあります。
(5) MRI、CT検査など
  MRI検査は子宮内膜症の診断に有効です。
  CTはX線被ばくの問題がありますので、若い女性は特に気をつけましょう。(52ページをご覧下さい。)

【治療】
(1) 薬剤による治療
■薬剤の種類
 妊娠した時や閉経になった時に子宮内膜症がよくなることから、これらを利用した治療法があります。

①偽妊娠療法
 代表的なものにピルがあります。
②偽閉経療法
(a) 注射 Gn-RHアナログという注射を用います。
1ヵ月に1回の注射で済みます。(商品名 リュープリン、ゾラディックス、スプレキュアMP)
(b) 点鼻薬 Gn-RHアナログの点鼻薬です。1日2、3回使用します。(商品名 スプレキュア、ナサニール、ナファレリール、イトレリンなど)
(c) 内服薬 男性ホルモン様の働きをする内服薬が有効です。1日2、3回用います。(商品名 ボンゾールなど)
③この他漢方薬が用いられることもよくあります。
 薬の効果、副作用、副作用が出た時の処置など、あらかじめ医師から話を聞いておきましょう。

■薬剤による治療の例
①まず薬剤を数ヶ月間用いて子宮内膜症の治療を行い、子宮内膜症を良くしてから妊娠の努力をする方法があります。
しかし子宮内膜症の治療薬は、治療中妊娠が不可能なものが殆どです。
②排卵時期近くにGn-RHaを用いるとフレアアップと言い、妊娠率が高まるという考えがあります。
③Gn-RHa や男性ホルモン様作用のある薬剤(商品ボンゾールなど)を数ヶ月連続し、使用した後、不妊治療(特に体外授精など)を行った時は妊娠率が高くなるという研究があります。
④薬剤、腹腔鏡手術などを組み合わせると、妊娠率が上昇すると考えられています。

(2) 手術による方法
■手術の種類
①腹腔鏡下手術
 お腹にあけた穴に器械を入れて、卵巣の腫瘍の部分だけを切除したり癒着をはがしたりします。
②開腹手術
 お腹を開けて手術を行う方法です。巨大な卵巣腫瘍や強い癒着が予想される時、あるいは子宮腺筋症の手術を行う時などに開腹手術をすすめられる時があります。

■手術の内容
①卵巣のチョコレートのう腫の内容を吸い出し、アルコールで内膜症の部分を破壊して治療します。
②子宮や卵巣の表面にできた子宮内膜症を焼き切ったりします。
③卵巣や腸などの癒着をはがします。
④卵管がはれていたら切除することもあります。
⑤必要な時は子宮筋層内の子宮内膜症を切除します。
⑥卵管がつまっていないかチェックします。
⑦お腹の中を洗浄して腹腔内の妊娠の邪魔をする物質(マクロファージや各種サイトカイン等)を洗い流します。

(3) 体外授精がすすめられる時があります。
 年齢や治療歴、子宮内膜症の程度により、体外授精がすすめられる時があります。医師とよく相談しましょう。



その他子宮内膜症における不妊治療にはいろいろなアプローチがあります。子宮内膜症自体は多彩な症状のある病気です。このため治療方法もいろいろあるのです。一人ひとりの症状が違いますから医師とよく相談されて、自分の症状に合ったいわば「手作り」の治療を受けることが大切です。


5 子宮の形の異常 子宮の形の異常

子宮の形、特に子宮の内側の形(内腔といいます)に異常があると着床しにくくなったり、妊娠しても流産しやすくなることがあります。赤ちゃんがなかなかできない方は、子宮の形に注意しなければならない時があります。

[子宮の内腔の異常はどんな時に起こるのでしょうか。]
(1) 子宮筋腫や子宮内膜症がある時
(2) 前回の流産や慢性の炎症などのために子宮の中で癒着が起きた時
(3) 先天性の子宮の奇型がある時─ いろいろな奇型があります。

[子宮の内腔の異常はどうやって診断するのでしょうか。]
(1) 内診で子宮の形の異常が分かる時があります。

(2) 超音波検査
超音波検査で子宮が2つに分かれているのがわかる時があります。2つの子宮は大きさが同じであったり、片方が異常に小さかったりさまざまです。

(3) 子宮卵管造影検査
造影検査をすると、子宮の内腔が異常な形で造影される時があります。

(4) 子宮鏡検査
子宮鏡で観察すると子宮内にポリープや筋腫があったり、癒着があるのが分かります。また子宮内の奇型も観察することができます。

(5) 腹腔鏡検査
腹腔鏡で子宮表面を見ると表面の異常から子宮の奇型が推測される事があります。

(6) MRI検査
MRIでかなり詳しく子宮の異常が推測されることがあります。
他の検査と合わせて、最終的な診断になることがあります。

【子宮奇形の種類】
もともと女性は胎児の時に、将来子宮になるもとの組織を左右2個もっています。これが一緒になって1つの子宮になります。
この過程で成長が止まると、いろいろな奇形が起こります。
 この中でも代表的な奇形をあげておきましょう。

【子宮奇形の治療】
①中隔子宮や弓状子宮の場合は、子宮鏡を子宮の中に入れて観察しながら中隔を切除する方法があります。また開腹や腹腔鏡を用いての手術療法もあります。

②双角子宮の場合は開腹手術を行い、子宮の筋肉を切開し、子宮の中に飛び出している筋層を切除します。その後また子宮の筋肉を縫い合わせるのですが、この際手術後子宮が狭くならないように工夫する方法があります。(ストラスマン手術など)



手術の方法、副作用の有無、将来の妊娠の可能性など、主治医とよく相談しましょう。
子宮奇形の程度によっては、手術より他の不妊治療を優先させるべきとの考えがあります。


6 クラミジア感染症 クラミジア感染症

クラミジア感染が不妊の原因となることがあります。クラミジア・トリコマティスが原因ですが、感染後、潜伏期は1〜3週間と考えられています。
クラミジア感染症は現在家庭の主婦の5〜10パーセントに認められるといわれております。最近クラミジア感染が原因と考えられる不妊症が増えています。

◆クラミジア感染の進み方
クラミジアは腟→子宮頚管→子宮内→卵管→骨盤の中へと感染が進む可能性があります。
クラミジアに感染した場合、治療しないでおくと骨盤の中にまで炎症が広がる事があります。骨盤内に炎症が広がった場合17%の確率で不妊になるという研究があります。

【検査】
(1) クラミジア抗原検査
・女性の側の検査は子宮頚管の中の分泌物を調べる方法が主流です。(EIA法、PCR法、LCR法など)
・男性は初尿を採って検査するのが普通です。(EIA法、PCR法、LCR法など)

(2) クラミジア抗体検査
クラミジアに感染すると血液の中に抗体ができるため、これを検査する方法です。主にIgG抗体とIgA抗体というものを調べます。

(3) 腹痛や発熱などが見られ感染が広がったと考えられた時は、白血球数やCRPなどの他の血液検査が必要になります。

(4) 超音波検査
卵管に異常がないか、腹水がないか等を調べます。

【治療】
クラミジア自体は比較的弱いため、薬がよく効くと考えられています。
治療にあたって注意すべき点がいくつかあります。
①パートナーは必ず検査を受けること。
②お互いにクラミジア感染が確認された時は、治ったことが確認されるまでセックスは避けること。
③薬による治療後、治ったことを必ず確認することです。

[クラミジア感染はなぜ不妊症になることがあるのでしょうか。]
クラミジア感染後の不妊の原因は、いくつかの種類があると考えられています。このため、もしクラミジア感染が不妊の原因であると考えられた時は、それぞれ原因に合わせた治療が必要になります。

[クラミジア感染による不妊症はどのような治療をするのでしょうか。]
(1) 卵管の周囲に癒着があると考えられる時は、腹腔鏡による検査を行った上で治療を行うことがあります。

(2) お腹の中の妊娠を妨害すると考えられる物質は、腹腔鏡下でお腹の中を洗浄して体の外に流してしまいます。

(3) 卵管が狭くなったり、閉塞された時は、
 ⓐ通水治療
 ⓑX線透視下で卵管造影を行いながら治療を行う。
 ⓒ卵管鏡下卵管開口術
  FTカテーテルを用いながら行います。
 ⓓ卵管開口手術
 ⓔ卵管を経由しない妊娠方法(体外授精)
などの治療がすすめられる時があります。

[その他の感染症]
クラミジア感染以外では淋病の感染に注意しましょう。
特に一時減ったと考えられていた淋病が最近増えてきています。淋病は男性は激しい排尿痛がありますが、女性では自覚症状があまりありません。このため発見が遅れ、お腹の中に淋菌が入り込み骨盤腹膜炎を起こし、その結果不妊の原因になることがあります。淋病で今問題になっているのは、薬が効きにくいものが増えていることです。
また、女性の症状が目立たないといっても、
①腟の分泌物が増えてきた。
②黄色い帯下がある。
③パートナーが排尿時の痛みや分泌物(膿のようなもの)が出ているといっている。
④お腹が痛くなったり、同時に熱が出てきた。
などの症状があったら早目に病院を受診しましょう。



これらの病気は予防が大切です。予防は何と言ってもコンドームの使用です。性感染症予防にセックスの時はコンドームをつけるのを忘れないようにしましょう。


7 不妊と関係のある他の病気 不妊と関係のある他の病気

妊娠を希望して病院に来られた方で、いろいろ検査をしてみると内科的な病気をはじめ他の病気が見つかる時があり、これが不妊と関係する時があります。何か異常があって病院に行くのではなく、検査で不妊に関する隠れた病気が見つかる場合があります。
妊娠を希望する場合、これらの病気の治療を優先する、あるいは治療をしながら不妊治療を受けるようすすめられる時があります。

(1) 甲状腺の異常
不妊の時に最もよく見つかる異常です。
甲状腺機能亢進症(代表的な病気はバセドウ病)、甲状腺機能低下症(代表的な病気は橋本病)、双方とも症状が重い時は不妊の原因となり得ます。
甲状腺の病気は20〜30歳の、ちょうど赤ちゃんを望まれる年齢の方に多いので、赤ちゃんを望まれて病院に来られた時は、あらかじめ検査を受けるようすすめられる時があります。

(2) 貧血
貧血の検査も重要です。よほど重症でない限り直接不妊症の原因にはなりませんが、貧血の程度によっては、胃や腸、腎臓の病気、あるいは子宮筋腫や子宮内膜症といった妊娠と直接関係のある病気がみつかる時もあります。

(3) 糖尿病
血液中の糖をコントロールするインシュリンは排卵にも関係すると考えられています。もちろん糖尿病が見つかればその程度に応じて治療が優先されることがあります。

(4) 自己免疫疾患
いろいろな自己免疫疾患は、重症の時は不妊の原因になったり、妊娠しても流産の原因になったりすることがあります。きちんと管理を受ける、妊娠した時は適切な薬による治療を受けることなどが大切です。

(5) 子宮内膜の病気
子宮内膜増殖症など、ホルモン異常が原因と考えられる異常では着床しにくい時があります。あらかじめホルモン療法を受けて、子宮内の環境をよくしておくことが大切です。

(6) 精神的な問題がある時
神経症やうつ状態、パニック障害などがある人で、抗不安薬を内服している時があります。
薬の種類によっては、血液中のプロラクチンホルモンが高く、排卵障害が起こっている時があります。こうした時は、薬を代えるか、プロラクチンの値を下げる薬を内服するようすすめられます。

8 免疫性の不妊 免疫性の不妊

まだはっきり分かっていませんが、精子や卵子の働き、また授精や着床、あるいは妊娠した時に至るまで、免疫が働いている可能性があります。このどこかで異常が起こると不妊の原因になることがあります。
ただ免疫がどの程度関与しているか分からない所があるため、必要な検査がすべて整えられているとは言えません。

【現在必要と考えられている検査】
(1) 抗精子抗体検査
精子に対する抗体を調べるものですが、抗精子抗体は1種類だけではないため病院によって検査方法が異なります。

(2) 自己抗体検査
抗核抗体、抗DNA抗体など。
ただしこれらの検査で何か異常が出たからと言って、すぐ不妊と関係するわけではありません。不育症や習慣性流産のように、せっかく妊娠しても何回も流産をくり返すのも、いろいろな免疫が関係している時があります。妊娠されても赤ちゃんを抱けないというのはとてもつらいことです。専門医とよく相談することが大切です。
なお不育症や習慣性流産の方は第9章をごらん下さい。

【治療】
(1)抗精子抗体陽性の方は、その検査方法、陽性の程度によりますが、普通のタイミング指導より→人工授精→体外授精の順に妊娠率が上がる可能性があります。

(2) 自己抗体が陽性の時は、今まで気がつかなかった内科的な病気がないかチェックをすすめられる時があります。
しかしこれが陽性というだけで不妊になることはまずありません。抗精子抗体だけでなく卵子の周囲にある透明帯という膜に対する抗体もあります。この抗体がある時は、体外授精や顕微授精が有効であるという研究があります。

9 環境と不妊 環境と不妊

 最近男性の精子数が昔と比べて減ってきているのではないかという研究が発表されて反響をよんでいます。日本のデータはまだ多くはないようですが、環境問題に関心の深いヨーロッパを中心にいろいろな研究が行われています。
 これらの多くは環境ホルモンが関係しているのではないかと考えられていますが、もし本当であれば、今後日本でも真剣に考えなければいけない問題となるでしょう。また日頃口にしている食べ物の農薬はどうかという問題もあります。
 日本では「ポジティブリスト制度」という農薬の規制制度が二〇〇六年から導入されることになりました。
現在約800種類以上の農薬が使用されているそうですが、これらの農薬の基準を決め、これを超えて残留している食品であれば、この流通を禁止する制度です。
イギリス等残留農薬の基準に厳しい国では、日本で通常に食べられている食品でも、輸入禁止になっているものもあります。
 やや遅い感じもしますが、ともかく一歩前進したことには違いありません。私達も自分と将来の子ども達のために監視を続けるようにしましょう。
 喫煙と不妊についても重要な関係がありそうです。タバコを1日20本以上吸う習慣のある女性は、タバコの本数が増えるに従って不妊になる率が高まるという研究があります。男性も同様です。
 喫煙習慣のある女性は、妊娠した時に流早産率が高まったり、出生時の体重に差があるといわれています。喫煙されている方は、赤ちゃんを希望した時点で禁煙を心がけましょう。

10 男性不妊 男性不妊

(1) 精子の形成と輸送について
精子はまず精巣(睾丸)で作られ、精巣上体に集められます。その後、精管を通って射精されます。
なお精子は尿道に行くまでの途中で精嚢と前立腺の液と一緒になり精液となります。従って男性不妊とは精巣で精子が作られ、精管を通過し最後に射精されるまでの課程に異常があるとおこり得ます。
男性側に不妊の原因がある時は、女性と同様さまざまな理由がありますが、大きく分けると次の3つになります。
①精巣(精子を作る部分)の異常
②精路(精子を運ぶ通路)の異常
③性機能の異常(セックスそのものができないなど)

(2) 精巣に異常がある場合
【原因】
①原因不明の場合
②精索静脈瘤
③染色体異常(クラインフェルター症候群など)
④治療を受けなかった停留睾丸など。

【治療】
①原因不明の場合
この場合でも精巣内(睾丸内)にわずかでも精子が存在していれば、これを利用して顕微授精をする事ができます。これをTESE(Testicular Sperma Extraction)といいます。

②精索静脈瘤
精巣の周りには何本かの血管が集まっています。これが拡張してしまったものを精索静脈瘤といいます。
この時は静脈瘤に血液が集まるために精巣の温度が上昇してしまうと考えられています。精子を作る精巣は温度に敏感なため、ここで温度が高くなると精子を作る能力(造精能力といいます)が低下すると言われています。
このため精索静脈瘤の場合は手術を行い、静脈の流れを少なくし温度を下げるようにすると精子の運動率の向上が見られ、妊娠される方が多くなると考えられています。
実際に手術を行った医師の発表した治療効果には差がありますが、15〜55%の妊娠率と考えられています。
しかしこの手術の後に妊娠された方は大勢いるので、一番先に考慮されるべき治療手術でしょう。他にホルモン剤を中心とした治療法もあります。

③クラインフェルター症候群(Klinefelter 症候群)
男性の染色体異常で、1000人に1人の割合でこの病気の方がいると考えられています。
人によっては睾丸が萎縮していることもあり、精子数の減少が認められることがあります。
精巣内に精子がある時は、この精子を採取しTESEにより妊娠可能の時があります。

④停留睾丸
手術により睾丸を正常な位置に戻します。ただし手術は子供のうちに実施されるのが普通です。成人後では精子を作る能力が失われている時があります。

(3) 精管に異常がある場合
精子が通ってくる通路(精管といいます)に異常がある場合です。精巣で精子が作られていても、精管が何らかの原因でつまってしまうと精子が運ばれなくなってしまいます。
これにもいろいろ原因があります。
①精巣上体の炎症など

②慢性の気道疾患のあとに精管が狭くなってしまうことがあります。
ヤング症候群(Young 症候群)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や慢性気管支炎のあとなどに精管が詰まってしまうことがあり、これをヤング症候群といいます。

③小さいころ鼠径ヘルニアの手術を行った後に、精管の閉塞が起こることがあります。
男性不妊の患者さんのうち小児期に鼠径ヘルニアの手術を受けた方の27%に、手術が原因と考えられる精管の閉塞が認められたという研究報告があります。

【治療】
①精管がつまっているとはっきりしている場合は、手術がすすめられる場合があります。
手術後の治療効果は精管のつまりの位置、程度にもよります。このため手術を受ける時は専門の医師との詳しい話し合いが大切です。
今のところ精管が通るようになる確率は50%位、その後に妊娠ができる確率は20%位といわれています。

②閉塞している精管の中に貯まっている精子を採取し、その後顕微授精を行う方法があります。
これをMESA(Microsurgical Epididymal Sperm Aspiration)といいます。MESAによる妊娠率は施設により差もありますが、おおむね20〜30%位と考えてよいでしょう。

③精管の障害でも直接精巣から精子を取り出すこともあります。

(4) 性機能に異常がある場合
性的な要求が起きない、勃起しない(ED障害)など性機能の面での障害というべき症状があります。最近外来の相談でも増えてきています。

◆勃起はどのようにして起こるのでしょうか。
ペニス(陰茎)は④尿道海綿体と、その周囲を覆う②陰茎海綿体からできています。これらの海綿体は全体が⑥筋膜という膜で覆われていますが、それぞれの海綿体は⑧白膜という繊維で出来た膜に囲まれています。
海綿体は外陰部で身体の奥のほうに入り込んでいますが、この辺りでは海綿体筋があり、この筋肉も勃起時に役割を果たすと考えられています。

◆勃起のメカニズム
まず海綿体に行く動脈から血液が海綿体に流れ込みます。海綿体が広がると、⑧白膜が①陰茎背静脈を圧迫し、また白膜の中を貫通する静脈も圧迫されるため、海綿体から血流が静脈に戻れなくなります。
このため海綿体に血液が貯まり勃起することになります。また海綿体の筋肉が収縮して勃起の働きを助けます。
次に射精がおこると、動脈の流れが低下します。
このため海綿体が圧迫していた静脈に血液が流れ出し、勃起状態が終了します。

◆勃起をおこすのには神経の働きが重要です。
神経の働きには中枢神経と末梢神経の2つの神経系統があると考えられています。

▽中枢神経
①脳の視床下部に、視覚や聴覚、あるいはいろいろ頭の中で考えることにより勃起をおこすセンター(中枢)があると考えられています。逆に何らかの抑制的な働きが加わると勃起できないこともあると考えられています。これを「心因性」といいます。

②これに対し陰茎に刺激が加わると、この刺激が脊髄の中の仙髄という所(S2〜S4)の勃起中枢に働いて反射的に勃起が起きるルートがあります。これを「反射性勃起」といいます。

▽末梢神経
先程の仙髄(S2〜S4)の勃起中枢から副交感神経(勃起)、交感神経(萎縮)の神経がそれぞれ、陰茎海綿体に入り込んでいます。
これは中枢神経の「反射性勃起」と違うルートと考えられています。
これらの神経が勃起とその後の働きをコントロールしていると考えられています。

【勃起障害の原因】
勃起障害には次のような理由が考えられます
(1) 男性性器の基本的な病気(例えば泌尿器科的な病気)がある時

(2) 男性生殖器以外に問題がある時
①明らかな原因がある時
・脳血管障害、糖尿病、肥満など内科的、脊髄損傷など外科的な病気のある時
・うつ状態など精神・神経科的な病気のある時
・薬や、過度のアルコールに原因がある時

②セックスに関して心の中に問題がある時
・肉体的・精神的なストレス、新婚時の勃起不能、妊娠すること自体の不安、短小コンプレックス等
これらはそれぞれ専門家の診断と適切な治療が必要となります。 最近の医学の進歩はいろいろな異常を的確に正していく力を持っています。
ただ内科的な病気のように専門医が身近にいることが大切な時もあります。正確な知識をもった専門医を受診するには、主治医を通して紹介してもらうことが必要でしょう。

【勃起障害の治療】
(1) 男性生殖器そのものに異常がある時は、その治療を受けることが大切です。

(2) 男性生殖器以外に問題がある時、
①明らかに原因がある時は、その治療が優先されます。例えば、糖尿病、うつ状態など。ある程度症状が良くなればED障害用の薬がすすめられる時もあります。
脊髄損傷があった時などは仙髄の勃起中枢を刺激することで精子を採取し人工授精がすすめられることがあります。

②心の中に問題がある時
ⓐ心理療法やカウンセリングが有効な時があります。
これらにはさまざまな治療法があります。ストレスが原因の時、新婚時の緊張が原因の時など、それぞれに有効な方法があり、専門医との相談が大切です。
セックスレスのご夫婦が増えているという臨床の現場からの実感はありますが、もし赤ちゃんが欲しければ早目に専門医を受診されることをおすすめします。

ⓑ海綿体に注射をする方法があります。海綿体に血液が十分貯まると勃起するので、海綿体を広げて血液を入りやすくする治療法があります。
いろいろな薬が用いられていますが最近はプロスタグランディンEという薬が主に使用されています。
心因性の障害の方、脊髄損傷の方にも有効ですが、薬が保険適用になっていません。副作用を含めて専門医とのしっかりした話し合いが大切です。

ⓒホルモン療法
性欲そのものは男性ホルモンが作用していると考えられています。男性でも女性でも性欲がおちた時は、パートナーの要求不満が起こる時があります。
こうした時に男性ホルモンが有効な時がありますが(男性でも女性でも)、このホルモンを内服や注射で用いると、勃起にも有効な時があります。

ⓓ薬剤による方法
現在クエン酸シンデナフィル(バイアグラ・商品名)塩酸バルデナフィル(レビトラー・商品名)タダラフィル(シアリス・商品名)などの薬剤が用いられており、勃起障害にはとても有効です。
 注意事項は●年齢( 65歳以上)●高血圧●心疾患●糖尿病、●高脂血症、●脳血管障害のある方は注意して使用することです。硝酸剤(狭心症や心筋梗塞の薬剤)を使用している方は内服しないようにすすめられています。また注意が必要な時は少量から試みる時もあります。

ⓔ勃起補助器具があります。
現在医療器具として厚生労働省から正式に承認されているものもあります。(ツムラリテント・一般名)
薬剤が有効でなかった方や、もう少し硬度が望ましいという方に有効とされています。

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