赤ちゃんが欲しい方に

第6章 不妊症の治療

不妊症の治療

不妊症の治療

不妊症の検査を受けているうちに自然に妊娠する時があります。これは検査自体が治療になっているからかも知れません。およそ20%の人が検査中に妊娠するというデータが多くの病院から出ています。
検査の上で明らかな異常が見つかった時はその治療を行うことになります。代表的な病気については次の章で詳しく説明することにしましょう。
ここでは検査上、特に異常が見つからなかった時の治療法について説明していきたいと思います。なお他に不妊の原因になり得る異常があっても、この章の治療を先に行うようすすめられる場合もあります(例えば軽度の子宮筋腫や子宮内膜症など)。
なお大まかに見ると次のような順序で治療が進むことが多いようです。

赤ちゃんが欲しい時の治療の方法


一般的には次のような順で治療をすすめます。

〔1〕タイミング指導
 排卵の時期に合わせて夫婦生活をする方法です。

〔2〕排卵誘発剤を用いる方法
 タイミングよく排卵をすることをねらったものです。

〔3〕人工授精(AIH、IUIともいいます)
  人工授精には2つの方法があります。
  ①普通の人工授精 
  ②排卵のタイミングを合わせる人工授精

〔4〕体外授精(IVF・ET)

〔5〕顕微授精

〔6〕特殊な方法

 例えばAID(他人の精子を使った人工授精)など
通常、治療は〔1〕→〔2〕→〔3〕→〔4〕の順にすすめられますが、〔1〕→〔3〕→〔2〕→〔4〕という場合もあります。
中には、体外授精は受けたくない、人工授精までと〔1〕→〔2〕→〔3〕という人もいます。どういう方法を選択するかは治療を受ける側の希望によります。
正しい知識と判断力が必要とされますが、ご家族や医師との根気よい話し合いが必要です。

赤ちゃんが欲しい時の治療の方法

1 タイミング指導 〔1〕タイミング指導

排卵のタイミングをみて夫婦生活をする方法です。実際の排卵のタイミングをみるにはいくつかの方法があります。

①病院に行って排卵の日を判定してもらう。
②自分で排卵を推定する。
(基礎体温、排卵判定薬、排卵時のおりもの、排卵時の腹痛など)。

◆病院に行って排卵の日を判定する。

まず医師の検診を受け、超音波検査を受けながら排卵の日を推定します。この場合は排卵判定薬を参考にする時があります(病院では一定限度で保険扱いが可能です)。
もちろん基礎体温をつけておくのは原則です。


◆基礎体温と排卵

基礎体温が低温から高温になる時に排卵が起こることが多いのですが、低温期からさらに体温が下がった時が排卵とは限りません。中には体温が高温期になった時に、排卵が起こる時もあります。



◆どんな日が妊娠しやすいのでしょうか

①排卵のその日だけ夫婦生活をするより、排卵の直前位から1〜2日おいて2〜3回位夫婦生活をする方が3倍位妊娠率が高くなると考えられています。

②排卵日まで夫婦生活をしないでおくと、精子は毎日作られるため、古い精子が新しく作られる精子の足をひっぱるという考えもあります。

③ある年齢以上になると、精巣の中がいっぱいになると、それ以上新しい精子が作られなくなるという考えもあります。ですから、時々夫婦生活をして、古い精子を出し、排卵の時に良い精子の状態にしておくと良いでしょう。



また、赤ちゃんの事ばかり考えてしまい、「夫婦生活」=「赤ちゃんを作るためのもの」になってしまっては困ります。
夫婦生活は大事な会話のような部分もあり、リラックスをすることも大切です。


2 排卵誘発剤を用いる方法 〔2〕排卵誘発剤を用いる方法

排卵誘発剤は
① 単独で用いられる時
② 2種類の異なった薬を用いる時
③ 排卵誘発剤の効果を上げるため、他の薬と一緒に用いる時
などがあります。

排卵誘発剤は「何を」、「いつ頃から」、「どのくらい」使用するかは、個々の症状で異なります。医師とよく相談しましょう。

◆排卵誘発剤の種類について
排卵誘発剤は大きく分けて2種類あります。1つは内服する薬、1つは注射薬です。一般的には内服薬の方が弱く、注射薬の方が強い効果があります。

① 内服薬
●内服薬の種類について
内服薬は主にシクロフェニル剤(商品名…セキソビット)とクエン酸クロミフェン剤(商品名…クロミッド)が用いられます。

●内服薬の使用方法
⒜一般的にはセキソビット(商品名)、クロミッド(商品名)とも月経の3〜5日目から5日間用いられます。
⒝薬の効果を見ながら、薬の量が増えたり、使用期間が長くなったりすることがあります。
⒞最もよく使われるクロミッド(商品名)の妊娠率は大体30〜35%と考えられています。
⒟他の薬と排卵誘発剤を組み合わせるようにすすめられる時があります。いずれも排卵誘発剤の効果を高めるためのものです。数種類ありますが、薬の使用前には医師から詳しい説明を聞きましょう。

●内服薬の副作用について
⒜内服薬の最大の副作用は多胎妊娠です。排卵誘発剤を用いないで自然に妊娠した場合、双胎ができる確率は約
1.3%と考えられていますが、内服薬では約5%になると想定されています。
⒝卵巣過剰刺激が起こる可能性もあると考えられています。しかし、注射薬に比べるとはるかに確率は低く、仮に起こっても程度は軽いと考えられています。
⒞発疹が出る時があります。
⒟妊娠した可能性がある時は薬を使ってはいけません。

② 注射薬
●注射薬の種類について
注射薬は脳下垂体から分泌されるゴナドトロピン(HMG)という物質を用います。このゴナドトロピンにはFSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体化ホルモン)の2種類がありますが、注射薬にはこの2種類の成分が入っているのが普通です。このFSHとLHの成分の比率によって注射薬はいくつかの種類に分けられます。
FSH:LH=1:1
FSH:LH=1:0.33
FSH:LH=1:0.0003以下
 



最近使用可能になった薬剤にリコンビナントFSHがあります。卵巣過剰刺激をおこさないように純粋のFSHだけを精製した薬剤です。
 最近日本で使用が許可されるようになりました。




●なぜ注射薬はこのようにホルモンの比率が違うのでしょうか
 これはLH成分が多いとたくさん卵胞ができ、LH成分が少ないとその逆になるからです。
注射薬に反応しにくい人、年齢が比較的高い方はLH成分が多い注射薬をすすめられます。
 たくさん卵胞が成長しすぎてはいけない人、以前卵巣過剰刺激をおこしたことのある人は、LH成分が少ないか、無い注射薬がすすめられるのです。

●注射薬の使用方法
注射薬は通常月経開始後から使用されます。
月経3〜5日目頃から開始されるのが普通ですが、薬の種類、使用量、投与間隔、投与方法などは人により異なります。

●注射薬の副作用について
⒜ まれにアレルギー様の症状や過敏症のような症状がでることがあります。発疹やほてり感など。
⒝気持ちが悪くなったり、しびれ感・頭痛が出たりすることがあります。
⒞多胎妊娠の可能性があります。内服薬より可能性が高く、約20%の方におこるという研究があります。
⒟卵巣過剰刺激がおこることがあります。

卵巣過剰刺激(OHSS)とは
[症状]
自覚的な症状としては、下腹部の膨満感や痛みが出ることがあります。腹水が貯まってくると症状がもっと強く出ることがあります。血液検査をすると血液が濃くなり(ヘマトクリット値という値が高くなります)白血球が増えたりします。また血液が凝固しやすくなり(血管の中でかたまりやすくなるということ)、まれに、血管がつまってしまうこともあります。飛行機のエコノミー症候群と同じような症状です。

卵巣過剰刺激が起こると、
①まず卵巣が腫れてきます。
②次に腹痛や腰痛が出ることがあります。
③卵巣内に水が貯まったり、腹水が貯まってくるのは、血管の中の水分が血管外に出てしまうからです。この結果血液が濃縮され、ヘマトリクリット値が上昇してきます。いわば「どろどろ血液」になりやすくなります。
④症状が増強すると血管内で血液が固まりやすくなったりします。このため心筋梗塞や肺梗塞、脳梗塞が起こりやすくなることがあります。



 また以前にもこうした症状が出たことがあると、次回同じような治療を行う時は厳重な管理が必要となります。特に病院が変わった時などは、あらかじめ主治医に伝えておきましょう。


[治療]
運悪く卵巣過剰刺激が起こった時はどうするのでしょうか。
①卵巣過剰刺激が起こりそうになった時
注射中に卵巣内の卵胞が異常に大きくなったり、数が増えたりします。腹痛を強く訴える時もあります。極端な場合は卵胞の発育をすすめるHMGの注射を止めるようすすめられる時があります。
②卵巣過剰刺激がすでに起こってしまった時
ⓐ妊娠しないように指導する時があります。
 (妊娠するとさらに悪化するため)
ⓑ「ドロドロ血液」をうすめるため、いろいろな成分の点滴をすることがあります。
ⓒあまり腹水や胸水が貯まると苦しくなるので、これらは吸引して出すことがあります。
ⓓ小児用バファリンという薬を使って血管が血流で固まりにくくする場合があります。
ⓔ尿の出が悪くなる場合があるため注意しながらドーパミンという薬を使い、尿のコントロールを行うことがあります。
ⓕ卵巣の卵胞に水がたくさん貯まった時は、これを吸い出す場合があります。ただし、これは比較的早期に何度も貯まりますので、その度に吸い出すことが必要になることがあります。

多彩な症状を起こすことがあり、比較的早い時期でも重大な異常が出る場合もありますので、医師から治療に関し適切な話があるでしょう。

[予防]
卵巣過剰刺激が起きないようにするには予防が第一です。
①以前に卵巣過剰症状が出た方は注意が必要です。
②卵巣過剰刺激の症状が出始めたら、卵胞刺激を中断する勇気も必要です。
③排卵誘発剤の使い方で卵巣過剰刺激を予防しようという努力もされています。
ⓐ注射の中のLH成分が卵巣過剰刺激を強くすることから、LH成分の少ないゴナドトロピンや純粋のFSHのみを使用する方法があります。
ⓑ連日ではなく1日おきの注射の方法があります。
ⓒ当初少量の注射を行い、効果を見ながら量を増やす方法があります。
ⓓまた逆の方法もあります。さらに特殊なポンプを使って、極めて少量ずつ注射を入れていく方法があります。

3 人工授精 人工授精

◆どんな時人工授精がすすめられるのでしょうか

●精子の数が足りなかったり、数はある程度あっても運動率が悪かったりする方にすすめられる方法です。
●また特に精子に問題がなくても、タイミング指導を始め、いろいろな治療を行っても妊娠しにくいという方にもすすめられることがあります。
●さらにご夫婦のお互いが忙しく、なかなかタイミングが合わない時に、あらかじめ精子を冷凍しておき、ちょうど排卵のよい時にこの精子を解凍し、人工授精をするという時もあります。

◆なぜ人工授精は普通の妊娠より効率が良いと考えられているのでしょうか

たくさんの精子が腟内に出ても、卵管の中の卵子の周りに到着できる精子は少ないと考えられています。一般的には、腟内に数千万〜1億程度の精子が出ても、卵管内の卵子の周りにたどり着けるのは数十〜数百匹と考えられています。
こうした精子のロスを防ぐために排卵のちょうどよい時を選んで、子宮内に精子を送りこむことを人工授精といいます。自然の夫婦生活に比べると格段に多くの精子が卵の周りに送り込まれるために、妊娠率がそれだけ高くなると考えられています。

◆人工授精(AIH・IUI)の方法

人工授精は、自宅あるいは病院で精子を採取してもらいます。
採取された精子は、できるだけ条件が良くなるようにいくつかの準備を行った後、(洗浄法、DGS法、スイムアップ法などがあります)実際に子宮内に送り込まれます。これらの方法は精子の運動率を上げたり、精液中に含まれる細菌数を減らすという目的もあります。
人工授精時は多少の痛みはありますが程度は軽く、麻酔が必要なほどのものではありません。

◆人工授精のタイミング

(1) 自然の排卵のタイミングで行う時もありますが、多くは排卵誘発剤(経口・注射薬)を用いるか、排卵誘発剤とその効果を上げる薬剤を用いながら行うのが普通です。
人工授精はタイミングが重要です。
前にも述べましたが、実際の排卵日を推定するにはいくつかの方法があります。
●卵胞の大きさから人工授精の日が決められる時があります。
●卵胞の大きさを確認後、HCGホルモンを注射し、人工授精の日と時間が決められる時があります。
●この時、尿の中のLHホルモンを測定し、排卵のタイミングの推定の参考にする時があります。
●子宮内膜の厚さが参考になる時があります。子宮内膜の厚さを超音波でみると排卵が近いことが分かる時があります。



HCG(Human Chorionic Gonadotropin)
卵の準備が出きていると、HCGで卵が出やすくなります。(このHCGは排卵誘発剤ではありません。)




細い管を卵管にまで入れる時があります。
これをHIT法(Histeroscopic Insemination into Tube)といいます



(2) 排卵コントロール下での人工授精
排卵する時間を、薬の力で何月何日の何時頃と時間の単位までコントロールし、その時間に合わせ人工授精を行うものです。排卵したての新鮮な卵子と精子が出合う分、妊娠率が高まるという考えです。
体外授精の時と同じですが、まずGn ─RHアナログという薬を用い、脳下垂体から出るホルモンを止めます。次にHMGを用い、卵胞を成長させます。
卵胞が一定の大きさになったら(直径18〜 20㎜)、排卵の準備ができたと判断されます。そこでHCG注射を用いると(Gn─RHアナログは中止します)その時から34〜 36時間後に排卵が起こります。その時期を選んで人工授精を行う方法です。
この方法は卵胞がたくさんできることがあるため、多胎妊娠の可能性が出てきます。また排卵の後に卵巣過剰刺激を起こすことがありますので、主治医とよく相談をしてから治療を開始しましょう。
またHMG製剤やGn─RHアナログを用いるため、やや費用がかかります。

◆人工授精は何回位まで行うのか

人工授精は理論的には大変よいのですが、すべての人が妊娠するとは限りません。
多くの治療成績を見ると早い段階での人工授精で妊娠する人が多いようです。3回目位までは妊娠率が5%位ずつ上昇しますが、その後は少しずつになり、6回目以降はほんの少しずつの増加になるようです。
また、人工授精をくりかえすと、卵管の感染をおこすこともあり得るということから、気をつけながら行うべきだという考え方もあります。
人工授精は10回位を目安にすべきではないかという研究もあります。
また人工授精だけで、それ以上の高度生殖医療を希望されない時は(例えば体外授精など)方法をかえて人工授精にチャレンジするという方法もあります。

4 体外授精 体外授精

卵管で授精し妊娠に至るのが普通ですが、排卵誘発剤を用いて排卵の準備をさせた上で、卵巣から卵(卵子)を取り出します。普通精子は病院で採取し、その精子を調整の上、一定の数を卵子にかけます。
授精が確認されたら、その授精卵を子宮内に戻します。一度体の外に卵を取り出し、授精させるので体外授精といいます。体外授精で最初に赤ちゃんが生まれて20年以上が経ちました。その後いろいろな研究がなされておりますが、生まれた赤ちゃんに統計上、身体的・精神的なハンディは無いといわれています。
最近の報道によると、最も新しい調査では、生まれた子の65人に1人は体外授精児であるというデータがあります。

体外授精の前に知っておきたい基礎知識

●体外授精の話の前に脳下垂体 — 卵巣 — 子宮の関係を確認しておきましょう。体外授精のポイントになります。
脳下垂体から卵巣にFSHホルモン(卵巣刺激ホルモン)が働き、卵巣の中の卵胞を成長させます。ある程度卵胞が成長して大きくなるとLHホルモン(黄体化ホルモン)が一時的に出て、排卵を起こします。
●本来卵巣の中には赤ちゃんのもとになる卵がたくさんあります。その卵の1つ1つは卵胞という袋に入っています。卵胞の中には卵胞液が入っています。1つの卵巣には10数万個の卵があると考えられています。
●FSHホルモンが脳下垂体から出ることで、卵巣の中の1個の卵胞が選ばれ、中の卵胞液が増えていきます。その結果卵胞が大きくなり排卵の準備ができてきます。排卵の準備ができたところで脳下垂体から大量のLHホルモンが出ます。これをLHサージといいますが、これをきっかけに排卵が起きます。

体外授精の方法

①まず自然な排卵を起こさずに、人工的に卵をたくさん作ることが必要です。このためには主にGn─RHアナログを用いて自然に起こる排卵を抑えます。

②次に卵のもとになる卵胞をたくさん作るために、人工的にFSHホルモンを投与します。通常FSHホルモンは卵胞がある程度大きくなるまで投与します。

③ 卵胞がある程度大きくなること(大体直径約18㎜ 〜20㎜ かそれよりやや大きい程度)を目ざしています。この卵胞の大きさは超音波の検査でチェックします。
またこの時血液中のエストラジオール(E2)の値を参考にする時もあります。
同時に子宮内膜の厚さをチェックすることも大切です。子宮内膜があまり薄いと、せっかく排卵しても着床しにくいためです。



卵胞がたくさん大きくなり過ぎると、卵巣過剰刺激などの副作用が起こることがあるため、経口排卵誘発剤をメインに用いる時もあります。
これは体外授精の技術力が高くなってきたため、少ない卵でも授精率・妊娠率が高くなってきたという背景があります。




④卵胞がある一定の大きさになったら、Gn ─RHアナログを中止します。その後、人工的なLHホルモンを投与します(HCG)。このHCGを投与すると34〜36時間後に排卵する可能性が高いため、この時間を目標に卵をとります(採卵)。

⑤卵胞の中に針をさします(穿刺針といいます)。
その後卵胞の中の卵胞液を吸い出すと、一緒に卵が吸引されます。採卵の時は多少の痛みがあり、その場合は麻酔を使う時があります。

⑥卵を培養液の中に移します。この培養液は卵が成長しやすいような成分が入っています。
この中に、卵1個あたりの所定数の精子を入れます。
これを媒精といいます。精子の数は、精子数、運動率などにより決まります。
精子は病院内の採精室で採取するのが普通ですが、どうしても採れない時は相談の上、自宅で採取する時もあります。また採卵の日に精子が採れない時は、あらかじめ採取した精子を、必要時まで冷凍しておくこともできます。

⑦顕微鏡下で授精を確認します。
 授精したかどうかは翌日分かります。

⑧通常採卵した日から2〜3日後に授精卵を子宮内に戻します。(これを胚移植といいます)。
なお、戻す卵は2個以内が普通ですが、個数については医師とよく相談しましょう。
卵を戻す時は痛みはほとんどなく、麻酔を使う必要はありません。

胚盤胞移植
また2〜3日後ではなく4〜5日後に胚移植をすることがあります。これを胚盤胞移植といいます。
胚盤胞移植の利点は、この時期の方が着床する時期に近く、自然に近いのではないかという考えがあることと、採卵5日目頃の方が3日目ごろより子宮の収縮が軽く着床しやすいのではないかということからです。
欠点は胚盤胞まで発育しない授精卵が出てくるため、胚移植ができなくなる可能性が増えることです。

2段階移植
2日後にまず胚移植を行い、5日目頃に胚盤胞移植を行う方法もあります。

⑨胚移植をした後は、授精卵が着床し発育しやすい環境を作るためにホルモン剤を使用することがあります。
これを黄体維持ルテアールサポートといいます。
使用される薬は、体外授精の方法や子宮の状態などにより選択されます。
・HCGホルモンの注射
・黄体ホルモンの注射 連日、1週間に1度など
・黄体ホルモンの内服薬
・黄体ホルモンの腟錠 など
これらの薬は単独でも用いられる他、何種類かの薬と合わせて使用される場合があります。
*どんな薬を、いつからいつまで用いるかは医師から説明を聞きましょう。

⑩授精卵の凍結
たくさんの授精卵が得られ、子宮に戻しても、まだ授精卵が残っている時や、卵巣刺激をしている途中で卵巣過剰刺激の症状が出てきた時(OHSSといいます。72ページをごらん下さい)は授精卵を凍結した上で保存し、後日解凍後、子宮内に戻す方法があります。これを授精卵の凍結保存といいます。

⑪凍結授精卵を子宮に戻す時
凍結授精卵を子宮に戻す時はいくつかの方法があります。
・自然の排卵を待って、数日後、凍結授精卵を解凍→培養した日を合わせて胚移植を行う方法。
・ホルモン補充療法を行って戻す方法。
あらかじめGn ─RHアナログを用い、自然の排卵を起こさないようにした上で、人工的に卵巣から出る卵胞ホルモンと黄体ホルモンを使用して、着床しやすいと考えられる日に、解凍した授精卵を戻す方法です。
*自然周期をすすめられるか、ホルモン補充療法下の移植をすすめられるかについては、それぞれ医師から説明があるのが普通です。



授精卵をいつまで凍結・保存しておくかが問題となります。多くの病院では女性が妊娠できる年齢までを目安にしているところが多いようです。
なお凍結授精卵の妊娠率は、通常の体外授精の妊娠率とほぼ同程度かそれ以上になる程、妊娠率が上がってきています。


実際にはどのようなスケジュールで体外授精を行 うのでしょうか。


卵胞刺激の際にHMG製剤を使わない時、クロミッドなどの経口排卵誘発剤を用いることもあります。
また、Gn ─RHアナログの使い方もいろいろあり、それぞれ特長があります。年齢やこれまでの治療経過などいろいろな点を考慮して決定され医師から説明があります。

体外授精の副作用

 
①排卵誘発時の副作用
(a) 卵巣過剰刺激(OHSS)が起こる場合があります。
●軽い時は採卵を行い、胚移植を行う場合もあります。当初軽い症状と思われても急速に悪化することもありますから、あらかじめ医師からの注意を聞きましょう。また症状が軽くても、予防的に治療を行う場合があります。
●採卵を行い授精させるものの、胚移植を行わない時があります。卵巣過剰刺激は、妊娠すると悪化するからです。凍結した授精卵は、次の周期以後に子宮に戻します。重症が予想される時はHMG製剤の投与を中止する時があります。次の機会にはこれらの経験をふまえてよりマイルドな方法で卵胞刺激をするのが普通です。
(b) 多胎妊娠の可能性もあります。
2個以上の授精卵は戻さないのが普通ですが、授精卵の状態によって戻す数についての医師からのアドバイスがあるでしょう。

②採卵時に副作用が出る時があります。
(a) 採卵時に痛みを感じることがあります。痛みの予防にはあらかじめいろいろな麻酔法が使われる時と、採卵後に鎮痛の治療を受ける時(必要時)があります。
(b) 採卵時に出血が起こる時があります。
●まれに卵巣の傍にある血管が傷ついて出血が起こる時があります。急速な出血の時は、採卵中に処置できますが、少しずつ出血した時は、すぐにわかりません。しばらくしてからお腹の中の痛みが出たり熱が出たりした時は、すぐ医師と相談しましょう。
●卵巣に何回か針がささるので、少量の出血がお腹にたまったり、そのために痛みや微熱が出ることがあります。抗生物質の投与と短期間の安静でほぼよくなります。

③妊娠後の副作用
妊娠しても、流産や子宮外妊娠になる場合があります。授精卵を子宮内に戻しても子宮外妊娠になってしまうのは、妊娠初期の胎児は子宮の中よりも卵管の方が好きで、そちらに行ってしまうためかもしれません。
うまく妊娠し、出産に至ればよいのですが、妊娠しても流産になった時、あるいは子宮外妊娠になってしまった時などはとてもつらく、ご家族以外のいろいろな人のサポートが必要な時があります。何回チャレンジしても妊娠できない時のストレスも耐えがたく、こうした時のためにカウンセリングが必要な時もあります。

GIFT法

 
排卵した卵子と精子を卵管の中に入れて授精・妊娠を企てる方法です。卵管の中では妊娠するための環境が良いということを利用したものです。
ただこの方法を採用するためには、卵管の通過性が良いということが大事な条件になります。
実際には腹腔鏡を用いるか、子宮を経由して卵管鏡(卵管の中に管を入れる)を用いて卵子と精子を送り込みます。現在は主に体外授精を何回か試みて妊娠しなかった時にすすめられることが多いようです。

5 顕微授精 顕微授精とは

精子の運動能力が低く卵子に入り込めない時、精子数が極端に少ない時、通常の体外授精で妊娠できなかった時、無精子症と診断されても精巣や精巣上体に精子がある時などは、1個の精子でも授精が可能な顕微授精をすすめられることがあります。顕微授精にはいくつかのアプローチがありますが、卵子の細胞の中に直接精子を入れる卵細胞質内精子注入法(ICSI)が広く用いられております。

顕微授精の方法

①採卵までは、通常の体外授精と同じ方法です。

②採取された卵を見て、顕微授精が可能かどうか観察
します。顕微鏡で見ると、顕微授精を行っても授精できない卵があらかじめわかる事があります。

③顕微授精をする際には、卵をインジェクションチェンバーという容器に入れます。
卵をホールディングピペットで押さえこみ、精子をインジェクションピペットを通じ、卵の細胞質に送り込みます。
精子が細胞室内にきちんと入り込んだことを確認します。

④授精の確認と胚移植
顕微授精後16〜 18時間後に卵を観察します。顕微授精がうまくいっている時は、2つの核を認めることができます。(雌雄前核といいます)順調な授精卵の確認を続けた後、通常の体外授精と同じ時期に胚移植を行います。

顕微授精の問題点

顕微授精で奇形率が高くなることはないか

顕微授精をすすめられる場合、赤ちゃんの障害(奇形など)の比率が高くならないか、多くの方がもっとも気にされます。顕微授精による赤ちゃんが初めて生まれてから10年以上たちましたが、今のところ通常の体外授精に比べて、明らかに異常の比率が高くなったという研究は出ていないようです。ICSIで妊娠した時の流産率が約20%とされています。自然妊娠の場合の流産率よりやや高いと言えます。

●また体外授精と同様、自然妊娠に比べ2児以上の多胎妊娠の比率が高くなる傾向があります。このため多胎妊娠の結果生じる、早産に伴う障害が増える可能性がないとはいいきれません。



顕微授精と年齢
顕微授精の治療が行われるのは、精子に問題がある場合に多いですが、同時に目的となる卵の質が問題となる時があります。女性の年齢が若く卵の質がよければ顕微授精でも精子が入りやすいということがあります。
早くから精子に問題があることが分かっており、顕微授精の他に治療の方法がないと分かっている方は、早めに治療をうけることも選択の一つです。


6 特殊な治療方法 特殊な治療方法

夫に精子が全くいない時、他人の精子を使った人工授精( A I D(Artficial Insemination with Donar))を行うことがあります。
他人の精子を用いて人工授精を行うわけですから、ご夫婦間の充分な話し合いが大切です。現在このAIDを行っている施設は限られていますので、医師とよく相談しましょう。
不妊の専門医はAIDについてよく相談にのってくれるでしょう。

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