赤ちゃんが欲しい方に

第4章 女性が受ける不妊症の検査

女性が受ける不妊症の検査

はじめに

 ここでは一般不妊治療の過程で行われる検査について説明しましょう。不妊の原因を知り、その後の治療に進むためには不可欠なものばかりです。
治療に向かわれる方々にとっては不安なことが多いものです。不妊の検査ではどんな検査をするのか、どれくらいの時間がかかるのか、痛みはあるのだろうか、費用はどの位かかるのだろうかなど、実際に診察を受ける前に知りたいことがたくさんあるでしょう。

まず、女性の場合は月経の周期に応じていろいろな検査が行われます。◦月経期に行う検査、◦低温期に行う検査、◦排卵期に行う検査、◦高温期に行う検査、◦月経周期にかかわらず行う検査などがあり、検査によっては一度だけでよいものもあれば、頚管粘液検査や超音波検査などのように、排卵日を予測するために毎月何回か検査を行う必要があるものもあります。

どのような検査方法で異常の有無を調べるのか、一つ一つの検査について詳しくお話していきましょう。

一般的な検査の流れ

  
不妊症の検査は、基礎体温を見ながらすすめていきます。初診がいつになるかによって検査のスタートは異なります。また病院によって検査の内容、順番が異なります。また検査のうちには保険が効かないものもあります。

◆初診時
①内診 ②超音波検査 ③貧血検査 ④血沈検査
(内科的な病気があると異常値が出ることがあります)
◆月経期
月経血培養(行わない時もあります)
◆低温期
①血液検査(ホルモン検査)  ②卵管の通過性をみる検査(卵管造影検査・卵管通気検査・卵管通水検査)
◆排卵期
①頚管粘液検査 ②フーナーテスト
◆高温期
①子宮内膜検査(行わない時もあります)  ②血液検査(ホルモン検査)
◆周期にかかわらず(月経時以外)
①子宮鏡検査 ②子宮内膜症の検査(超音波、腫瘍マーカー検査)③クラミジア検査 ④腹腔鏡検査
◆いつでも検査可能
①抗精子抗体検査 ②精液検査

内診と超音波検査

  
初診の時、一般的には最初に内診と超音波検査を行います。
子宮筋腫や子宮内膜症がないか、卵巣の大きさに異常がないか、感染症が疑われるような異常がないかなどを調べます。

基礎体温

赤ちゃんが欲しい方は基礎体温をつけることが大切です。排卵がきちんとあるか、いつごろが妊娠しやすいタイミングか、授精した後赤ちゃんが子宮に着床してくれそうかなど、基礎体温からいろいろな情報が得られます。
基礎体温は女性のホルモンの働きをそのまま表してくれます。はじめは少し面倒と思っても、しばらく続けてみると慣れてくるものです。長期間にわたって記録できるような用紙に記載すると、基礎体温が見やすくなります。
基礎体温を毎日記録すると、主に次のようなことがわかります。

●排卵があるか、ないか。
●排卵があっても、遅れていないか(遅延型の排卵といい、赤ちゃんができにくい原因になることがあります)。
●排卵が不規則ではないか(赤ちゃんができにくい時があります)。
●排卵がおこった後、十分な高温の時期があるか(着床と関係します)。

また通常不妊症の検査は、基礎体温を見ながら月経周期に応じて行います。したがって基礎体温は不妊治療の基礎といえます。

基礎体温

知っておきたい基礎体温の知恵 基礎体温の正しい測り方

体温を測る時間は朝目覚めた時です。体を動かす前に、お布団の中で測っていただきます。起床してトイレに行ったり、着替えをした後はエネルギーが消費され、微妙に体温が上昇します。これでは正確な基礎体温とはいえないので、体を動かす前に測りましょう。また、最近は電子式の測定器もあります。

体温の見方

基礎体温には普通2つの目盛りがあります。普通の摂氏の目盛りのほかに、35・5〜38度の間に50等分した目盛があり、これをOV目盛(ovulation =排卵)といいます。
これは微妙な体温の変化をより詳しく見るためです。

上が普通の摂氏です
36度、37度、38度の間に小さな目盛があり、1度の間が20等分してあります。
●小さな目盛1つが0.05です。
●したがって例で言えば36.50になります。

下が0V目盛です。
35.5度と38度の間を50等分しています。
●ここでは1つの目盛が1です。
●したがって例で言えば20になります。

基礎体温につける記号

基礎体温表をわかりやすいものにするために、月経や不正出血などがあったときにはマークをつけておきましょう。
記号記入欄がありますので、そこに記号を書き入れます。例えば月経は×、不正出血は▲、中間痛は△、中間痛の帯下感は+のように記入します。
備考欄には、基礎体温に影響があると考えられることがあったことを記録しておきましょう。例えば、ゆっくり起きた日、風邪をひいた日、体温が36・0度より低かった時などです。

ドクターQ&A[基礎体温について] Q いつも必ず同じ時間に測らなければいけない のですか?

A 一定の時間に測定するのが理想ですが、それぞれの生活のリズムがあります。あまり一定の時間にこだわらず、目が覚めたときに測定することを心がけましょう。休日などゆっくり起きたときは体温が高くなります。備考欄に「ゆっくり起きた日」と記入しておきましょう。

Q 仕事が不規則で、夜勤もあります。

A 朝起きたときに測定することを原則にしましょう。仕事のため測れなかった日は空欄のままにしておきましょう。

Q 何日かは続けられるのですが、いつも長続きしません。

A 何日かに一回でも続けていけば大体の傾向はつかめます。できるかぎり根気よく、少しずつつけるようにしましょう。基礎体温をつけるのは日記と似ています。少しずつ継続すると慣れてくるようです。
枕もとに婦人体温計とメモを置いておいて、朝忙しい時はメモだけ、後から体温表に記入する方法もあります。

Q 赤ちゃんが欲しいのですが、基礎体温はつけなければいけませんか?

A 可能なかぎり基礎体温はつけられることをおすすめします。基礎体温はホルモン検査を含め、ほかの不妊症の検査と同じくらい大切
な情報を与えてくれます。

Q 旅行に行って、一週間基礎体温はつけていませんでしたが…?

A 基礎体温は毎日記録することが大切です。ただし旅行中につけられなかったのは仕方がありません。記録できなかった日、忘れた日があればその日の分は空欄にし、日付だけ入れておきましょう。基礎体温全体の型も大切です。

実際に行われる検査

1 月経期に行う検査

月経血培養検査を行う場合があります(行わない場合もあります)。月経血培養検査とは、月経中に月経血を採取し、その中に不妊の原因となる結核菌がいないか調べる検査です。最近では結核の頻度は減ってきましたが調べる場合もあります。結核菌はとても繁殖が遅いので、検査結果が出るまで時間がかかります。

2 低温期に行う検査

①血液検査
採血をして次のような検査を行います。
●末梢血(貧血検査など)
●血沈 
●脳下垂体ホルモン検査 
●卵巣ホルモン検査 
●甲状腺ホルモン検査 
●副腎皮質ホルモン検査 
●この他LH─RHテストなど必要な検査をすすめられる時があります。

②卵管通気検査
子宮腔に炭酸ガスを入れて、卵管の通過性をみる検査です。聴診器を当てて左右の卵管を通ってくるガスの音を
聞きます。卵管が詰まっている場合には音が聞こえません。卵管に通過障害があるかどうかがわかります。
検査は5〜10分で済みます。痛みはほとんどありませんが、検査をしてしばらく経つと肩に強い痛みを感じる時があります。少し我慢するとすぐ治まります。

③卵管通水検査
子宮腔に水を入れ、卵管の通過性をみることによって、卵管がつまっているかどうかを調べる検査です。
これは卵管の通過性が悪い場合の治療も兼ねます。水を卵管に通すことによって、狭くなっていた卵管が広がり、精子が通過しやすくなったり、授精卵が運ばれやすくなったりするからです。
検査は5〜10分です。痛みはほとんどありません。
卵管の閉塞や狭窄のあるときは、その程度により痛みを感じる時がありますが、痛い時は圧力を加減して痛みをコントロールすることが可能です。

④子宮卵管造影検査
子宮や卵管に造影剤を入れ卵管の通過性をみる検査です。胃の検査で造影剤(バリウム)を飲む検査がありますが、同様のものと考えるとわかりやすいでしょう。
この検査では、造影剤(ヨード剤)を専用の注入器で子宮腔に送り込みます。造影剤の流れ方をレントゲン撮影で確認しながら、卵管がつまっていないかを調べます。これにより子宮の奇形や筋腫などがわかることがあります。
検査は5分程度で済みますが、わずかな痛みがあります。痛みは造影剤を入れるスピードを調整することでコントロールすることができます。

〇卵管は長く、しかもかなり曲がりくねっています。写真のように写るのが普通です。
〇子宮の形が三角形(逆三角形のときもあります)で、両側の卵管が通っていれば正常です。

子宮卵管造影検査でわかる異常

子宮卵管造影では、子宮の型における、さまざまな異常がわかるときがあります。
しかし、卵管造影の検査で異常が疑われたからといって、ただちに異常と診断されるわけではありません。

3 排卵期に行う検査

①頚管粘液検査
子宮の入り口に当たる子宮頸部から分泌される粘液が「頚管粘液」です。この粘液を専用の注射器で採取し、分泌が正常に行われているかをみる検査です。
頚管粘液は、普段は子宮に細菌などが入り込まないように防御する作用がありますが、排卵が近づくと分泌量が増え、精子が通りやすいようにする働きがあります。そのためこの頚管粘液の分泌が正常に行われているかをみることが大切になります。

②フーナーテスト
排卵期に精子が子宮の中まで入っているかをみる検査です。排卵時夫婦生活をした後に、病院を受診し、(当日か翌日)腟内精子、頚管粘液内精子、頚管内精子、子宮内精子を採集します。精子が子宮のどの位置にどのくらいいて、そのうち何パーセントが動いているのかを見る検査で、精子の数と実際の活動を見るものです。
フーナーテストは結果が良いときは別ですが、結果が悪かった時は1回で結論づけないほうが良いでしょう。男性の体調が悪い時、アルコールを飲んだ時、緊張しすぎた時などは、本来は正常なのに異常な結果が出るときがあるからです。

4 高温期に行う検査

①子宮内膜検査
卵巣のホルモンの働きに応じた子宮内膜の状態をみるものです。(高温期、子宮内膜が着床できる状態に成熟しているかどうかをみます。)子宮内膜を採取するので少し痛みがある時があります。

②血液検査
エストラディオール(E2)プロゲステロン(P)など、着床時期に必要なホルモンを測ります。
エストラディオール(E2)は卵巣の卵胞から分泌される卵胞ホルモンで、子宮内膜の増大、頚管粘液の量の調節、卵の成熟、排卵など妊娠と関係するホルモンです。プロゲステロン(P)は排卵後に卵胞が黄体に変化して分泌される黄体ホルモンで、E2と協力して授精卵が着床しやすい環境を作る働きがあります。

5 月経周期にかかわらず行う (月経時以外)検査

①子宮鏡検査
子宮の中に内視鏡を入れ、子宮腔内に子宮筋腫やポリープがないか、あるいは子宮の奇形などがないかを調べるものです。胃の検査でいえば胃カメラに例えることができます。子宮内に子宮筋腫などが出ていると、避妊リングが入っているのと同じ状態となるため着床障害が起こることがあります。
検査は5〜10分くらいの短時間で済むことが多く、痛みはほとんどありません。

②子宮内膜症検査
子宮内膜症は、不妊症の主要な原因の一つとされています。このため妊娠を望む方は、月経痛などの症状を放置して子宮内膜症を悪化させることのないように気をつけることが大切です。
検査は超音波検査が主体となりますが、血液検査で腫瘍マーカー(CA125、CA19-9、CA72-4など)を測定することも参考になります。また総合的な診断をするために、MRI検査やCT検査をすすめられることがあります。(子宮内膜症がなぜ不妊の原因になるのか、また治療方法などについては第7章で詳しく説明しています。)



若い女性とCT検査
CT検査はX線を利用します。このため若い女性がCT検査を受ける場合は、卵巣の被ばくの問題がおこり得ます。よほど必要な時以外は、他の検査で代用したほうがよいでしょう。MRI検査はX線の被ばくの可能性はありません。




③クラミジア検査
クラミジアは性感染症の一種です。感染しても症状が少ないことが多いため、気づかないまま慢性化することがある病気です。検査としては、「クラミジア抗原検査」と「クラミジア抗体検査」があります。
クラミジア抗原検査は、子宮の出口(子宮頚管)の部分の分泌物を採取して検査します。
(クラミジア感染がなぜ不妊の原因になるのか、また治療方法などについては第7章で詳しく説明しています。)

④抗精子抗体検査
主に血液検査によって行うものです。「抗体」とは、自分の体に存在しないものが入ってきた時、それを異物として攻撃し体を守る物質です。人間の体の中にはさまざまな種類の抗体が作られていますが、精子に対する抗体として作られてしまうのが「抗精子抗体」です。精子を異物として排除しようとする抗精子抗体ができると、不妊に結びつく場合があります。抗精子抗体は、いくつかの種類があります。また女性だけではなく男性にも作られる可能性があります。

⑤腹腔鏡検査
腹部に数カ所小さな穴をあけ、内視鏡でお腹の中を観察するものです。切開は0.5センチほどで非常に小さく、術後にはほとんどわからなくなります。
月経痛などの子宮内膜症の自覚的な症状がなくても、腹腔鏡検査で内膜症があることがわかる場合があります。そのようなときは、引き続き腹腔鏡下の手術を行うのが普通です。
検査は麻酔などの手術の準備を含めて1時間から2時間くらいが普通です。数日の入院を要すると考えた方がいいでしょう。

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