子宮内膜症

Chapter 4 子宮内膜症の診断

Section 1 病院で行う検査

予めもっていた方が良い検査の知識

 月経痛、性交痛、月経量の増加や持続、貧血症状など、自分で感じる身体の異常(自覚症状)がある方が婦人科に診察に来られた場合、医師は問診や内診などを行います。その後さまざまな検査を行って、最終的な診断を下します。
 病院で行われる検査は「問診→内診→超音波検査→血液検査→CT、MRI→腹腔鏡検査」という順番で行われることが多いようです。なおCT検査以降は必要に応じて行われるのが普通です。
それぞれの検査方法は以下の通りです。

1 問診
 診察の待ち時間の間に、あらかじめ問診表を書いていただくことが多いようです。また医師から受ける質問は、「いつ頃から痛みがあるか」「最近痛みが強くなっているか」「鎮痛剤は内服しているか」「鎮痛剤を服用しているとしたら回数と量はどうか」「どんな医薬品を使っているか」「月経の量、期間」などが聞かれることが多いので、問診前に答えを整理しておくとよいでしょう。

2 内診
 医師が診療用手袋をつけて、指を膣内に入れて診察します。この診察で、子宮の状態(大きさ、形、硬さなど)や卵巣の状態を調べるとともに、子宮周辺の癒着の有無などを診断します。

3 超音波検査
 検査機器を使って、卵巣や子宮の様子をモニターに映し出された画像を見ながら診察します。
 お腹の上から診る検査と、膣の方から診るふたつの検査方法があります。
 ひとつは超音波を出す「プローブ」(探触子)という器具をお腹の表面にあてて、子宮や卵巣などの内臓にあたってはね返ってきた音波を画像として映し出す方法です。これは「経腹法」といいます。
 もうひとつは、細くて長いプローブを膣の中に入れて、膣内から超音波をあてて診る方法です。これは「経膣法」といいます。
 超音波検査では、子宮内膜症のほか、子宮筋腫や症状が進んで大きくなった子宮腺筋症なども見つけることができます。

4 血液検査
 子宮内膜症の補助診断として、本来はがんの診断に用いられる検査である腫瘍マーカー「CA125]などで調べる方法があります。 
 CA125の正常値は35IU/ml以下ですが、子宮内膜症の方が検査した場合、半数以上の方が高い値(35IU/ml以上)になるとされています。またほかの腫瘍マーカー「CA19-9」で調べることもあります。最近、CA125の値が低くてもCA19-9が高い場合があることがわかってきました。このため、CA125とCA19-9の両方で調べることもあります。この検査は初期の診断だけでなく、治療経過や治療効果の判定、再発の判断にもとても有効です。ただ注意しなければいけないのは、腫瘍マーカー検査が絶対的なものではないということです。子宮内膜症があっても腫瘍マーカーの値が低いときがあります。また月経時に腫瘍マーカーの検査を受けると、子宮内膜症でなくても高い値が出るときがあります。このため月経時の血液検査は避けるのが普通です。

子宮内膜症の検査で保険が利くのは「CA125」のみです。ほかの腫瘍マーカー検査はがんの疑いのあるときのみ保険が利きます。

5 MRI、CT
 問診、内診、血液検査、超音波検査の結果、必要と判断されたときは、MRI(磁気共鳴画像診断)やCT(コンピューター断層撮影検査)といった検査をすすめられるときがあります。どちらも身体の断層の写真を撮ることができるのですが、MRIはCTよりもかなり精密な画像が得られます。この検査では子宮内膜症の広がりや、がんの疑いがないかなど、より詳しい結果がわかります。

要 Check!  CT検査を受けるときは注意が必要です


CT検査はX線被爆量が比較的多いため、若い女性が検査を受けるときは注意が必要です。
特に子宮内膜症が疑われるときは、卵巣が直接検査の対象になるので、今のところX線被爆もなく、情報量の多いMRI検査のほうをすすめることが多いようです。


6 腹腔鏡検査
 腹腔鏡検査は、子宮、卵管、卵巣などを直接観察するために行われる検査です。
 検査は全身麻酔をした状態(局所麻酔で行うケースもある)で行われます。おへそのすぐ下を含めて数ヶ所をわずかに切開し、切開部分から腹腔鏡(お腹の内側を観察するための器具)を挿入して、モニターで観察します。なお、この検査をすることで、子宮内膜症の診断はより確実になります。
 このように、全身麻酔をかけたうえでお腹の一部を切開するため、普通は入院が必要ですが、日帰り手術が可能な病院もあります。また、現状ではすべての病院が腹腔鏡検査を実施しているわけではありません。検査を受ける前に医師と、「通院している病院で検査を受けるのか」「ほかの病院を紹介してもらうのか」「入院が必要なのか」など、詳しい話をしておきましょう。

Section 2 病気の進行度

病気の進行の程度を知る

 適切な治療方法の選択や再発の可能性をチェックするために、病気の進行状況を正確に見極めることが何よりも重要です。子宮内膜症の進行については、病巣の大きさや癒着の程度などを確認して診断します。

[ビーチャム分類]
 現在、日本で使われることの多い子宮内膜症の進行の診断方法は「ビーチャム分類」というものです。これは、内診と手術を合わせて診断する方法で、Ⅰ期〜Ⅳ期の4段階に進行度を分類します。

Ⅰ期
 婦人科の診察(内診)ではわからず、手術をして初めて小さな内膜症があるとわかるもの。

Ⅱ期
 子宮や卵巣あるいは子宮を支える組織(靭帯)が一緒か、あるいは別々に癒着している状態。診察すると痛みを感じることがあります。

Ⅲ期
 Ⅱ期の状態に加えて、卵巣が2倍以上に大きくなっている、子宮の後ろの方で直腸や卵巣が癒着している状態。

Ⅳ期
 子宮内膜症が広い範囲に広がり、子宮や卵巣がひとかたまりで区別がつかなくなっている状態。


[r-AFS分類]
 このほか、いくつかの診断法があります。その中でも代表的なものが、「r-AFS分類」(米国不妊学会による分類方法)です。この分類法は、腹腔鏡や開腹手術でお腹の中を診察したうえで、子宮内膜症の”全体像”ではなく、”部位別”に症状を評価点数化します。
例えば「左の卵巣の半分が強固に癒着=8ポイント」というように、部位別に症状の重さをポイント化し、この合計点数により症状の重さを4段階に分類するというものです。

ステージⅠ   1〜5ポイント   微症
ステージⅡ   6〜15ポイント   軽症
ステージⅢ   16〜40ポイント  中等症
ステージⅣ   41ポイント〜    重症

 ただ、r-AFS分類は腹腔鏡や開腹手術などで診断をするため、腹腔鏡検査を受けた方には大変役に立つ方法ですが、今のところ日本では、内診で診断することができるビーチャム分類のほうが、進行の診断に使われることが多いようです。
 これらの方法でわかった進行の程度は、治療方法やその後の経過を予測するうえで大変重要な役割を果たします。

Section 3 問診で医師から質問されること

病院で聞かれる事(問診)といいます

 問診で医師からはどのようなことを質問されるのでしょうか。この問診をもとに、医師は病気の進行状況などをある程度推測します。
問診で医師からよく質問される内容を下記に記載しましたので、自分なりに答えをまとめてから、病院に行かれるとよいでしょう。

Q.1 いつ頃から生理(月経)痛がありましたか?
<回答例>
・初潮の頃から
・高校を卒業した頃から
・20歳を過ぎた頃から
生理痛が起きた時期を年齢別に整理しておくとよいでしょう。

Q.2 生理の期間と量は?
 生理が始まった日から終わる日までの期間と状態、その間の月経血の量などについても詳しく医師に伝えましょう。

Q.3 生理の周期(月経周期)は?
 「生理の周期」とは、月経が始まってから次の月経が始まるまでの期間をいいます。

Q.4 生理痛以外の痛みの有無は?
<回答例>
・生理でもないのに腹痛がある
・腰が重い
・性交痛がある
・排便時の痛みがつらい
どの部分が痛むのかといったことや、痛み方(ズキズキ痛む、鈍痛があるなど)も整理しておくとよいですね。

Q.5 生理痛がある場合、これまでどう対処してきましたか?
<回答例>
・我慢していた
・市販薬(薬局薬店で購入できる薬)または病院で処方される薬を、生理の1日目だけ内服していた、あるいは2〜3日内服していた
薬(市販薬または病院で処方される薬)を内服していた方は、1日何回くらい内服していたかについても医師に伝えましょう。

Q.6 家族の既往歴は?
<回答例>
・母親が子宮内膜症
・姉妹が子宮内膜症
母親や姉妹など家族に子宮内膜症を発症した方がいるかどうかについて質問されることがあります。家族の既往歴についても病院に行く前に調べておきましょう。

Q.7 今まで婦人科を受診したことはありますか?また、これまで医師から子宮内膜症や子宮筋腫といわれたことがありますか?治療を受けたことはありますか?

Q.8 赤ちゃんが欲しいのに、なかなか妊娠できないとうことはありませんか?

Q.9 どんな仕事をしていますが?または仕事上のストレスはありませんか?

どの病院に行っても、問診で受ける質問は以上のようなものが多いようです。

Section 4 子宮内膜症と診断されたら注意すること

子宮内膜症と心構え

 子宮内膜症と医師から診断されたら、下記の点に注意するよう心がけてください。

「痛み」について

 月経痛、月経前後の痛み、腰痛などの「痛み」は、お腹を温めると症状が和らぎます。痛みに対しては、
・カイロをあてるなどして、お腹を局所的に温める
・痛いときは、あまり薄着をしない
・身体をしめつけるような服装は避ける
・婦人科の感染症にかからないようにする

といって点に注意しましょう。
 我慢できない痛みには、鎮痛剤を上手に使いましょう。
 鎮痛剤を使わないほうがよいと考えて、使わずに我慢している人がいます。もちろん鎮痛剤を使い過ぎることには問題がありますが、無理に痛みを我慢することはありません。むしろ、痛いときは早めに鎮痛剤を服用したほうがよいでしょう。鎮痛剤を服用して日常生活を楽にするのは悪いことではありません。また早めに鎮痛剤を服用すれば、結果的に服用量が少なくて済むことも多いものです。
 しかし鎮痛剤だけに頼っていると、子宮内膜症の症状が悪化してしまい、治療がかえって困難になってしまうことがあります。また鎮痛剤だけに頼り切ってしまうと、徐々に効果が低くなるため、1回の服用量が増えたり、より強い鎮痛剤を使わなければならなくなる場合もあります。

 鎮痛剤の種類によっては、長期間の使用で泌尿器に腫瘍ができたり、胃腸障害が強く出たり、胃腸に穴が開くなどの副作用が出るという研究結果もあります。服用にあたっては、こうした点にも十分気をつけましょう。医師や薬剤師に、薬剤の効果と副作用について十分説明を受けましょう。

「貧血」について

 月経量が多くて、貧血になってしまう方がいます。貧血の改善のためには、
①子宮内膜症の根本的な治療を行う
②貧血の薬を内服する
③貧血によい食事を摂る、の3点が大切です。
 貧血には、正常な赤血球をつくるために必要な「鉄分」などが多く含まれる食品の摂取が大切です。鉄分を多く含む食品は、赤身の肉、魚が第一です。このほか、ひじき、煮干し、緑黄色野菜、大豆などがあります。また、チーズなどの良質な蛋白質は、鉄分の吸収をよくします。お酒の中では赤ワインにだけは鉄分が入っています。
 鉄分と考えるとレバーとすぐ結びつきますが、レバーには少し注意が必要です。どの動物のレバーにも「脂溶性ビタミン」といって、過剰なビタミンが入っています。
 これらの過剰なビタミンを摂り過ぎると、妊娠した際、赤ちゃんの奇形の原因となる可能性があるという考えがあります。
 多くとも1週間に70g(卵1個分)以上のレバーは摂らないほうがよいという勧告を出している国もあります。

適度な運動を行いましょう

 適度な運動は子宮内膜症の発生を予防する、という研究結果があります。

Column3

嗜好品である「タバコ」の研究結果

「タバコ」が、子宮内膜症の発生を抑えるという研究結果があります。今のところタバコを肯定的にとらえている唯一のデータです。
 しかし、何も関係がないという研究結果もありますので、これを理由にタバコを吸うのは、やはりおすすめできません。
 将来、タバコの中で、何か子宮内膜症に有効な成分が見つかるとよいですね。

ログイン ID・パスワードを忘れた方